セブンは「うれしい値!」商品として、従来の「五目炒飯」「麻婆丼」「バターチキンカレー」をリニューアルするかたちで今月、348.84円で発売。また、牛乳やポテトサラダなどPB「セブンプレミアム」の一部商品も「うれしい値!」商品として扱う。
では、このままセブンの失速が深まり、他2社との差が縮まるという展開はあり得るのか。
「時間に余裕があるときは割安なスーパーを利用する人でも、時間がないときには多少高くてもコンビニを利用するというように、コンビニを利用する客には理由があるので、コロナ流行初期のような大きな社会的変化がない限りは、コンビニの来客数が大きく減るということはないでしょう。セブンの6~8月度の既存店売上高が減ったといっても、その下がり幅は前年同月比で1%以下という極めて小さなものです。遅れたとはいえ『うれしい値!』をはじめとする価格対応の取り組みも始まっており、またコンビニの顧客は価格という要素だけで判断して利用しているわけではないので、今後大きく売上が下がるということは考えにくいです。
何より注目すべきは平均日販です。セブンはファミマとローソンに10万円以上の差をつけて上回っており、実力の差は歴然としています。ファミマは2020年に伊藤忠商事の完全子会社になり、ローソンも今年、三菱商事とKDDIが50%ずつを出資する形態になりましたが、要はファミマもローソンも単独での生き残りを諦めたということです。両者とも大手総合商社が描く経済圏戦略・DX戦略のなかで最終消費者との接点の一つという位置づけになっていくと考えられます。
一方、セブンはコンビニを進化させたミニスーパー型店舗、具体的には『まいばすけっと』よりも大きく品揃えを豊富にした店舗の展開を計画しており、コンビニ市場よりも大きなスーパーの需要の取り込みを狙っています。これはセブン&アイグループのスーパーストア事業に生鮮食品を扱うノウハウを持っているからこそできることで、ファミマとローソンには無理な芸当です。カナダのコンビニ大手アリマンタシォン・クシュタールによるセブン&アイHDへの買収提案という不確実な要素は存在するのもの、セブンのコンビニ業界におけるリーディングカンパニーという位置づけが揺るぐことは当面ないでしょう」(中井氏)
(文=Business Journal編集部、協力=中井彰人/流通アナリスト)