――ニコンやローソンも三菱グループとして扱われますが、三菱グループに入ることで得られるメリットはあるのでしょうか。
「メリットがあるから三菱グループにいるというよりは、三菱が傘下に収めているという構図で、意図して三菱グループにいるわけではないのではないでしょうか。
三菱のグループ企業を語るうえで、三菱の源流企業である日本郵船は外せないと思います。岩崎弥太郎は海運業から事業を始めていますが、国有会社の日本国郵便蒸気船会社とのシェア争いで勝利した三菱は、郵便汽船三菱として三菱を名乗っています。その後、三井系国策会社の共同運輸と度重なる値下げ競争を行いの末に両社が疲弊し、日本の海運業の衰退を危惧した政府の仲介により両社は合併して日本郵船となりました。国策企業から始まり、三井系企業との合併など、三菱を名乗りにくいというのが正直なところでしょう」
――三菱の中での序列としては、どのような感じなのでしょうか。
「三菱商事、三菱UFJ銀行、三菱重工の御三家、その下に三菱地所、三菱UFJ信託銀行、三菱化学、三菱マテリアル、三菱電機、旭硝子(AGC)、日本郵船、東京海上日動火災保険、明治安田生命保険、キリンホールディングスの“主要10社”があります。ちなみに、AGCは岩崎弥之助の次男である岩崎俊弥が創業しているのですが、なぜ一度も三菱を名乗っていないのかわからない、不思議な会社です。三菱グループのなかでは、この13社までが主要企業といえると思います。また、“世話人会”や“金曜会”といわれる主要企業の集まりがありますが、今はこれらがそのほかの企業に対して強い影響力があるというわけでもありません」
――三菱には厳然たる上下関係があるのかとイメージしがちですが、今はそのようなヒエラルキーはなくなってきているのですね。
「仮に上下関係があった場合、下の企業が経営的厳しくなったら助けなければならないですが、どこの企業も他社を助ける余裕がありません。そのため、口出しすることもできなくなっているのです」
財務的なつながりの弱まりとともに、関係性も弱まってきているというのが現状のようだ。かつては鉄の結束があったように思われていたが、実態は大きく変わってきていたといえる。
(文=Business Journal編集部、協力=田中幾太郎/ジャーナリスト)