「看護師は国家資格の価値なくなった」は本当?時給が「しまむら」と同水準も

しまむら
しまむら公式サイトより

 ファッションセンターしまむらのパートの時給が“看護師並み”に上がっていると話題になっている。しまむらの時給が高いのか、それとも看護師の時給が低いのか、さまざまな見解が飛び交っている。

 7月18日、X上にこんな投稿がなされ、耳目を集めた。

「しまむらの時給がジワジワとうちの病院のパート看護師の時給に近づいている……抜かれる日もそう遠くはないな。国家資格の価値ってなくなりつつあるね」

 この投稿には、しまむらの「パート募集」の貼り紙が添付されており、そこには「時給1230円」とある。しかも、「賞与年2回あり」とも記載されており、待遇の厚さが関心を集めた。

 2023年10月1日時点で、東京都の最低時給は1113円。1200円台の時給も珍しくはないが、全国的に見ると最低時給が900円前後の地域も多く、地域差が大きいといえる。件の投稿にある、しまむらのパート募集がどの地域の店舗の情報かによって、時給が高いのか、または安いのかの判断も変わってくる。そこで、しまむらの求人情報を見てみよう。

 東京都内のしまむら店舗で募集されているパートの時給を見てみると、「西友成増店」や「土支田店」が1370円~、「あきる野Tokyu店」や「八王子オクトーレ店」が1300円~など、東京都の最低時給を大きく上回る1300円台が多数掲載されている。なかには、「浅草ROX・3G店」の1480円~という破格ともいえる時給での募集もある。

 東京以外でも、その地域の最低時給を上回る金額で求人が出ている。同じ店舗でもアルバイトよりパートのほうが時給は高いケースが多いが、多くの都道府県で1200~1300円台のパート募集が出ている。

看護師の時給は低いのか

 では、比較として挙げられている看護師の時給はどうだろうか。東京都内の個人経営のクリニックにパートで勤める看護師は、こう語る。

「私の時給は現在1600円です。数年前に勤め始めた時は1520円でした。開業医はバラつきが大きいと感じます。総合病院で働いている知人に聞くと、1800~2000円くらいの人が多いようで、さらに正社員はもっと待遇がいいですね」

 この看護師は、先の投稿の「国家資格の価値ってなくなりつつある」との表現に異を唱える。

「しまむらの時給が看護師の時給に迫ったからといって、看護師の価値がなくなるわけではありません。確かに、激務に給与が釣り合っていないという声もよく聞きますが、他の医療系の職種や国家資格と異なり、看護師は独立開業できない(しにくい)仕事です。異論もあると思いますが、いわば他の医療系職業のサポート的意味合いが濃いわけで、激務とはいえ決して給料が安いとはいえないのではないかと個人的には思います。もちろん、なかには仕事内容と給与が見合っていない病院・医院もあると思うので、一概にはいえませんが」

 厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、看護師の平均年収は508万1300円で、前年にくらべて約9.5万円上昇している。平均月収は35万1600円、ボーナスは86万2100円(調査対象の平均年齢は40.7歳、勤続年数は9.1年)。これらの数値も地域差が大きく、最も平均年収が高い東京は564.1万円に上る。しかも、看護師は年功によって給与が決まるケースが多く、経験・勤続年数によって上昇する傾向がある。

 こうしてみると、看護師の給与が安いとはいえないが、激務や不規則な勤務形態などに見合った報酬が得られているともいいがたい。また、正社員ではなくパートで働く場合、飲食店やアパレルショップなどのパートより数百円高いくらい金額で時給が設定されていることが多いようだ。

 多くの業界で人手不足が深刻化しており、高い給与を掲げて人材を確保しようとする動きは加速している。とはいえ、国家資格である看護師に迫る時給でパートを募集しているしまむらは、出色の存在といえるかもしれない。

 しまむらは2024年2月期売上高が前期比3.1%増の6350億円、営業利益は同3.8%増の553億円と好調で、ファッション専業では「ユニクロ」「GU」を展開するファーストリテイリングに次ぐ国内2位の規模となっている。

(文=Business Journal編集部)