定性的な情報から考えると、第一三共は明確な主力医薬品があり利益を伸ばしていますが、武田薬品は売上規模は大きいものの研究開発コストの増加によって利益を伸ばしていないのです。さらに第一三共は、エンハーツに続く新薬候補も複数開発中であり、この部分も市場で高く評価されているといえます。この成長力の差が市場の評価の差(=時価総額の差)につながっているものと考えられます」
武田薬品の役員報酬は高額だ。24年3月期のウェバー代表取締役社長CEOの連結報酬総額は20億8200万円であり、第一三共の代表取締役社長兼COO社長執行役員の奥澤宏幸氏の2億5300万円と比較し約8.2倍。また、前出・日経新聞記事によれば、ウェバー氏が過去10年で受け取った役員報酬は総額約150億円であり、第一三共の歴代トップのそれの6.5倍にも上るという。
「ざっくりいうと、武田薬品では欧米企業の役員報酬の相場が適用され、第一三共は日本企業の役員報酬の相場が適用されているということ。武田薬品は海外進出を進めるためにウェバー氏を海外の製薬大手から引っ張ってきたが、海外競合他社と比較して魅力的な報酬をウェバー氏に提示する必要があった。結果的に武田の売上高海外比率は9割にまで伸びたが、第一三共は6割ほど。また、第一三共は会長も社長も生え抜き社員で出世を重ねてきたサラリーマン経営者なので、一般的な日本企業の役員報酬となっている」(メガバンク系ファンドマネージャー)
(文=Business Journal編集部、協力=佐々木悠/つばめ投資顧問アナリスト)