MSJ開発失敗の遺産…三菱重工、世界の航空機運航を支える大きなビジネス展開

 ターボプロップ機ならまだしも、水素燃焼型エンジンに比べ推力が小さい水素電動エンジンでリージョナル・ジェットを飛ばすことは技術的ハードルが非常に高く、実現には時間を要し、実現できるとしても2030年代以降と考えられる。しかしながら、もし実現できれば、CRJ型機に新たな命が吹き込まれることになり、また、エンジンの換装で、MHI RJにはビジネスチャンスとなるに違いない。

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水素電動化したCRJ700の想像図 出典:ゼロアビア社

M&AによりMHI RJの更なる事業拡大へ

 MHI RJは、アグレッシブに事業規模の拡大を行い、民間航空での存在感を高めようとしている。特筆すべきは、同社は「ただ漫然と本業の成長を待つだけでは、大きな事業規模拡大は望めない」との認識の下、事業の多様化と新たな能力獲得のために、M&A(企業の合併・買収)を活用して事業を拡大し、ゆくゆくは航空総合メーカーとして生き残りを図ろうとしている点である。

 ホンダの米国子会社であるホンダ エアクラフト カンパニー(Honda Aircraft Company)がホンダジェットを開発・製造したように、いつの日かMHI RJがM&Aにより民間航空機の開発・製造の能力を獲得した上で「Mitsubishi(三菱)」の名を冠するジェット旅客機を開発・製造する日が来るかもしれないと考えるのは、期待が過ぎるというものであろうか。

(文=橋本安男/航空経営研究所主席研究員、元桜美林大学客員教授)