6月25日付「東洋経済オンライン」記事『「有名400社への就職に強い大学」ランキング50』にて、有名企業への就職率が高い大学のランキングを発表(出典元は「本当に強い大学2024 (週刊東洋経済臨時増刊)」<東洋経済新報社>)。大企業への就職に強いことで知られる東京大学や一橋大学、東京工業大学、早慶を抑えて私立の豊田工業大学が1位になった。「有名400社実就職率」は56.8%と高い比率となっているが、どのような特色のある大学なのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。
1981年にトヨタ自動車が設立した豊田工業大学(学校法人トヨタ学園/名古屋市天白区)の特徴は、専任教員1人あたり学生約10人という徹底した少人数制だ。一学年あたりの在籍学生は約100名ほどで、きめ細かい教育をモットーに掲げ、工業大学という名称からわかるとおり主に技術者・研究者の育成を目的としている。ちなみに比較値として、同じく私立の早稲田大学の一学年あたりの在籍学生は約9000人であり、文系・理系学部を擁する総合大学とは異なり、学部は工学部先端工学基礎学科のみしか設置していない。
カリキュラムはユニークだ。機械システム・電子情報・物質工学の3分野を融合した「先端ハイブリッド工学」という独自の学問体系を構築し、トヨタ自動車から講師を招くトヨタ生産方式概論やプレゼンテーション力養成などの実務的な授業に加え、経済学、哲学、国際関係、技術者倫理などの教養科目も用意。学部1年次・3年次には企業でのインターンシップが必修となっており、設備面では国内屈指の規模を誇るクリーンルーム、専用の工作工場なども充実している。
私立大学としては授業料が安いことも大きな特長だ。たとえば同じく私立の早稲田大学基幹理工学部の年間授業料は約178万円だが、豊田工業大学は70万円(教育充実・環境整備費含む)。国立大学の学納金(53万5800円)に近い金額となっている。寮も完備されており、学部1年次は全寮制(24年度は希望入寮)で、月3万4000円で寮に入ることができる。
注目に値するのが高い就職実績だ。進路は2022年度学部卒業者・修士課程修了者118名(社会人・留学生除く)のうち66名が就職。23年度の大学院修了者の就職希望者の就職率は100%であり、就職先にはトヨタ自動車、豊田自動織機、豊田通商システムズ、トヨタ紡織、デンソーなどトヨタ自動車と関係が深い企業のほか、本田技研工業、三菱電機、NTTドコモ、パナソニック、ヤフー、JR東海など有名大企業がずらりと並ぶ。
入試の難易度は高い。河合塾の偏差値ランキング(25年度入試難易予想)によれば偏差値は60.0であり、私立の工学系学部としては早稲田大学、慶応義塾大学、東京理科大学に次ぐレベルで、同志社大学と同等。23年度入試は第1次選考(大学入試共通テスト)と面接の第2次選考(23年度はコロナのため中止、24年度からは非実施)が行われ、一般選抜志願者874名に対し合格者は500名、入学者は77名。大学入試共通テストの合格者の最低得点率はA方式(5教科7科目)が78.4%、B方式(3教科4科目)は78.4%。24年度入試より「一般入試(本学独自試験)」も新規導入された。
大手予備校関係者はいう。
「共通テストで全科目平均で約8割取らなければならないので、難易度は高いといっていいですが、共通テストを利用できるので、受けておいて損はないと思います。特に英語・数学・理科の3科目のみの私立理系受験者で比較的偏差値が高い人にとっては狙い目ですし、中部圏の在住者で東京・大阪・京都などの大学に行きたいという考えがない学生向きでもあります。なんといっても就職実績が極めて優秀なので、入れるなら入ったほうがよいお薦めの大学です。
あえて難点をあげるとすれば、立地でしょうか。名古屋駅から最寄り駅まで電車で30分以上かかり、さらに駅から徒歩10分で、キャンパスの周辺は若者にとって魅力がある環境とはいいがたい。なので、いわゆる華やかなキャンパスライフを送りたい人や学業以外で刺激を受けたいような人は避けたほうがよいかもしれません。また、カリキュラムを見る限り、4年間、授業に実験、実習とかなり真面目にみっちりと勉強しなければならないと思われ、自分が大学生活において何に重きを置きたいのかも考慮すべきでしょう。もっとも、概して理系学部はどの大学も勉強が大変なので、その点は他大学と比べてあまり大きな違いはないかもしれません」
(文=Business Journal編集部)