国内で撮影をしている限り、国宝、重要文化財、天然記念物、史跡、名跡など、さまざまな国の文化財に接する機会がある。そんな撮影スタッフ全員に意識改革を促すことは困難なのだろうか。
さらに、別のテレビ局の関係者は、「要員を増やす」という施策にも疑問を呈する。
「今回、カメラマンが花道から転落したということですが、ある意味で文化財を破損したこと以上に注目すべき問題です。カメラマンはファインダーを覗いている際には足元が見えなくなります。また、この番組で使用していたカメラの詳細はわかりませんが、一般的に肩に担ぐタイプの撮影用カメラは7~8kgの重量があり、ちょっと躓くだけで転倒のリスクがあります。そのため、通常の番組撮影ではカメラアシスタントがカメラマンの導線を確保しますが、それが適切に行われていなかった可能性があります。場合によっては大けがの恐れもある事故です。もし要員が足りず、基本的な安全管理がおろそかになっていたのだとすれば、『芸能きわみ堂』の制作チームは意識が低すぎると言わざるを得ず、人数を増やしただけで問題が解決するとは思えません」
昨今、番組制作の予算が削られがちな民放と異なり、NHKは多くのお金や長い期間をかけて番組をつくることも可能だ。日本の芸能や文化、伝統を紹介する番組など、視聴率を稼ぐためではない、NHKだからこそ制作できるものは間違いなくある。そのためにも、NHKには襟を正してもらいたい。
(文=Business Journal編集部)