「データセンターは得体が知れない」住民の反対運動が続出、AI普及の妨げ

住民の反対運動

 全国でDC建設の計画が進むなか、建設予定地周辺の住民による反対運動も強まっている。2月5日付「千葉日報」記事によれば、千葉県流山市の約1.3haの空き地で持ち上がっていたDC建設契約が住民による反対を受けて撤回された。前出「日経クロステック」記事によれば、千葉県柏市や東京都昭島市でも反対運動が続いているという。DCの稼働が周辺住民に影響を与える可能性はあるのか。前出・西田氏はいう。

「もし仮にDCが高い建物の場合は、周囲の住宅に陽があたりにくくなるという日照権の問題が生じるかもしれませんが、それ以外には大きな影響というのはあまりないと考えられます。工場のように排水や煙が生じるわけでもなく、空調設備の騒音もゼロではないでしょうが、工場の騒音に比べればずっと少ない。なので、実害というよりは住宅地にそのような工業施設が建つという景観の問題が大きいのではないでしょうか。

 もともとDCは都心のビルの中や工業地帯など、住宅地とは分離されたエリアに設置されてきましたが、運営事業者側はより最適な場所を求めるようになり、自治体側も税収増を見込んで誘致するようになり、住宅地での建設計画が持ち上がるようになったため、周辺住民との問題が生じているケースが増えているようです」

 DCをめぐるこうした問題の解消につながりそうな新たな技術も生まれつつあるという。

「NTTが開発を進める次世代ネットワーク構想・IOWNを使えば、長距離の離れた場所にある複数のDCを高速通信でつないで一つのDCが稼働しているかのような環境を構築することができます。実用化が進めば、通信の遅延を防ぎつつDC設置場所の選択の自由度を向上させることが可能になるかもしれません」(西田氏)

(文=Business Journal編集部、協力=西田宗千佳/ITジャーナリスト)