アップルもコストコも追徴課税…外資系企業の租税回避の実態と「イタチごっこ」

 同じ2019年には米メタ(旧フェイスブック)の日本法人も約5億円の申告漏れを指摘されている。日本国内の広告料はメタのアイルランド法人に支払われていて、日本法人は手数料を受け取っていた。

 米ネットフリックスの日本法人であるNetflix合同会社も東京国税局の税務調査を受け、2019年12月期までの3年間で計約12億円の申告漏れを指摘され、過少申告加算税を含む法人税などの追徴課税として約3億円の納税を求められた。その際、同社が国内で取得した映画の配信権などをグループのオランダ法人に譲渡し、業務に見合った利益の分配を受けていないと判断された。

 また、過去に遡ってみると、アマゾンジャパンはかつてアマゾン・ドット・コム米国本社から販売業務の対価として受け取る業務委託報酬を主な売上とし、日本国内で納める税金を低く抑えていたと指摘され、2009年には米国本社の関連会社が東京国税局から140億円前後の追徴課税処分を受けた。当時、アマゾンジャパンは「課税は不適切」とコメントし、米国本社側は日米の二国間協議を申請した。ちなみにアマゾン米国本社が発表している年次報告書によると、2014年の日本での売上高は79億1200万ドル(約8700億円)、同年のアマゾンジャパンとアマゾンジャパン・ロジスティクスの売上高は合計で899億円強、法人税が約10億8000万円となっており、これによってアマゾンジャパンが決算資料上の法人所得を低く抑え、日本国内で支払う法人税等を低く抑えていたという見方もあった。

 デロイトトーマツグループで国際税務が専門の結城一政パートナーは「国際的な税務回避は従来からあるものであり、ここ最近始まったようなテーマではない」と言い、次のように解説する。

「10年以上前から、BEPS(Base Erosion and Profit Shifting:税源浸食及び利益移転)はOECDを中心として議論されてきたテーマです。いわゆるデジタル系企業だけでなく、金融やリース、製薬など国際的な企業はさまざまなタックスプランニングをしています。それは決して脱税が目的ではなく、合法的な枠組みの中で、税務コストをどう最小限にするかというビジネス的な枠組みから端を発したものと見ています。一方、確かに、デジタル系企業は収入の主体が無形財産や知的財産でのロイヤリティーであったりしますし、プラットフォームカンパニーであればプラットフォームの使用料という形だったりするので、製造業のような形のあるモノと違って所得が移転しやすいという特徴があります」

 BEPSとは、多国籍企業が本来経済活動を行っている国から意図的に利益を移転し、本来納付されるべき税金の源泉が浸食されている状態をいう。OECDは2012年にBEPSプロジェクトを立ち上げ、BEPS防止措置実施条約が2016年11月に採択された。日本を含む67カ国・地域が2017年6月に署名した。日本の国税当局も当然のことながら、このBEPSの理念に基づき、税務調査を行っているわけである。

2023年度税制改正で「グローバルミニマム課税」導入

 OECDではBEPS防止からさらに議論が進んだ。現在はどうなっているのか、結城氏が解説する。

「2024年4月以後に開始する会計年度から適用となることで大きな話題となっているのがPillar2(ピラー2:第2の柱)と呼ばれるグローバルミニマム課税です。これは、企業グループの国別の所得と税額から実効税率を計算し、グローバルに15%のミニマム税を課す仕組みです。それに合わせて各国の税制は、この4~5年で大きく変わってきています。例えば、アメリカでは『ギルティ(GILTI:国外軽課税無形資産所得合算課税制度)』と呼ばれる制度を2018年に導入。これは海外の軽課税所得に対しては原則課税するというものです。また、多国籍企業もレピュテーションリスク(風評ダメージによる損失)があるので、ここ数年くらいはどちらかというと、自主的に一定程度の納税をするようになってきているケースが見受けられます。多くの多国籍企業は新しく運用されるルールの状況を見てからでないと、タックスプランニングのしようもないということで、今は注視しているところと思います」