愛知医科大学で採点ミスが発覚し、本来合格するはずだった80人が不合格となっていたことがわかり、物議を醸した。だが、受験の専門家によると、採点ミスや判定ミスは日常的に起きているという。
愛知医科大学は2月20日、大学入学共通テストを利用した入試の成績判定でミスがあり、本来合格とするはずの80人を誤って不合格としていたと発表した。個人の成績を大学のシステムに入力し直す際、操作ミスによって一部の受験生の得点が実際の得点よりも低く入力されたという。
一次試験の合否発表の後、SNS上で「合格した友人よりも自己採点の点数が高いのになぜ不合格に?」といった投稿が相次いだことを受けて、大学側が確認したところミスが発覚したという。
大学入試は受験生にとって人生をかけた勝負の場ともいえ、あってはならないミスだが、受験指導専門家の西村創氏は、「採点ミスなどは毎年頻繁に起きており日常茶飯事だ」と語る。
「採点ミスは珍しくありません。問題文や選択肢に間違いがあり、後から特定の問題を全員正解とするといった事象も毎年発生しています。また、大学共通テストはどんどん長文化しており、問題も複雑になっています。条件文が複雑になると、解釈も広くなります。そうすると作問時には想定していなかった答えが正解となり、正解と設定した選択肢が間違いとなるようなケースが出てきます。そうすると、得点に変化が生じますから、一度不合格とした受験生が合格となるわけです」(西村氏)
不合格となり落ち込んでいたところに、合格とする通知が来れば嬉しいとは思うが、喜ばしいことだけではない。仮にそれが第一志望校だった場合、第2志望校などへの入学手続きを済ませてしまっているケースもあるだろう。そのようなときに、学校側は“被害者”への補償を行うのだろうか。
「補償を行ったというケースは聞いたことがありません。大学側のミスで合格者を不合格としたとしても、他校に納入した入学金など金銭的に補償することはしません。中学受験や高校受験でも、第1志望校が不合格となり、第2志望校に入学金や授業料等を収め、制服の採寸なども終わってから第1志望校から連絡があり、『実は合格していました』との連絡が入る、という話も聞いたことがあります」(同)
たとえば東京や神奈川の公立高校では、不合格となった受験生には採点済みの解答用紙の写しを返送するなどの方法で得点開示を行っているが、不合格となったことに納得できるシステムをすべての入試で導入できないのだろうか。
「得点開示を行っている学校も多くありますが、タイムラグはあります。合否発表から1カ月、2カ月と間が空くこともあります。そのため、得点開示が採点ミスなどによって不合格となった受験生を救済することにはつながりづらいのかもしれません。また、大学入学共通テストでは得点が開示されないので、自己採点でしかわかりません」(同)
一方、中学や高校の受験では、入試当日や翌日に合否が発表されるケースも増えている。これはどのような仕組みなのだろうか。
「選択問題についてはAI(人工知能)で採点が行われ、記述問題の採点に人的リソースが注力される、というかたちです。これによって省力化され、合否発表が早くなっています」(同)
AIが採点ミスをすることはないのだろうか。
「機械がエラーを起こすなどのトラブルで採点ミスが発生したというケースは聞いたことがないので、おそらく大丈夫だと思います。とはいえ、機械が判定して得点は出しますが、合否のラインを決めるのは人間なので、合格者が少なすぎて、後から追加合格者を出すといったケースは毎年発生しています」(同)
2018年には複数の大学の医学部で、男女比を調整する目的で、高得点だった女子受験生を不当に不合格としていたことが発覚し、大きな社会問題となった。誰をどのような基準で入学させるかは学校側に裁量権があるとしても、入試制度は公平性・透明性が担保されなければならない。受験生に対し、得点を開示するなどの制度を、共通テストでも導入すべきではないだろうか。
(構成=Business Journal編集部、協力=西村創/受験指導専門家)