米電気自動車(EV)メーカー、テスラのイーロン・マスクCEOが、日本市場での販売状況が期待外れになっていることを認めたとして、一部で話題を呼んでいる。テスラはかつて同社にとって日本市場は米国に次ぐ規模の大きさになるとみていたが、「NIKKEI Mobility」報道によれば2023年の日本での販売台数は約5500台ほど。同社の世界年間販売台数180万台(23年)からみると微々たる数字にとどまっている。マスクCEOは先月の会見で「日本のように市場シェアが著しく低い一部の地域が存在する」「メルセデスやBMWといった日本以外の自動車メーカーと釣り合う市場シェアを少なくとも確保すべきだ」(1月25日付「ブルームバーグ」記事より)と焦りを隠さないが、なぜ日本で伸びないのか――。
テスラの成長が踊り場を迎えている。23年10~12月の世界販売台数は48万台で、中国・比亜迪(BYD)の同四半期のそれは52万台となり、テスラはEV世界首位の座から陥落したことが大きなニュースとなった。加えてテスラの同期間の営業利益も前年同期比47%減の20億6400万ドル(約3000億円)に沈み、失速が鮮明となりつつある。
日本でもテスラの苦戦は続く。22年の国内EV販売の車種別シェアとしては、日産自動車の軽EV「サクラ」(約3万3000台)が1位で、日産「リーフ」が1万2732台、三菱自動車「eKクロスEV」が4175台となっている。
「日本でテスラの販売台数が低迷している一番の要因としては、そもそも日本の新車販売市場におけるEVの比率が海外先進国に比べて著しく低いという点があげられる。EUは約2割、中国は約3割、ガソリン車が主流の米国は少し下がって1割にあと少し満たないレベルだが、日本はわずか2~3%。充電設備の少なさや割高な価格もネックとなり、EVがマイナーな存在であるなか、図体が大きく修理やメンテナンス面も不透明なテスラは、日本の消費者にとって選択肢としてはあがりにくい。昨年の約5500台という販売台数も前年の約6000台から減少しており、今後日本メーカーから続々と新たなEVが投入されることもあり、日本に限っていえばテスラの存在感はまずます薄くなっていくだろう」(ディーラー関係者)
そんなテスラ車を所有する大きなリスクの一つとして認識されているのが、原因不明の急発進などによる相次ぐ事故だ。16年5月、米国フロリダ州で運転支援システム「オートパイロット」を作動させていたテスラの「モデルS」が、ハイウェイを横切ろうとした大型トレーラーと衝突する死亡事故が発生。テスラは「トレーラーの車体側面をトレーラーと認識することができず、ブレーキが作動しなかったのではないか」という趣旨の発表をした。
22年11月、テスラ製EVが中国広東省潮州市にて時速198kmという猛スピードで暴走した末に衝突事故を起こし、死者を出してしまうという事件が発生。事故を起こした運転手の家族がSNSで語ったところによれば、道路脇に駐車しようとした際にブレーキペダルの故障に気づき、とっさにハンドルを切って道路に出たところで突然車が急加速してしまったという。テスラは事故に関して、「事故車両の走行データを分析した結果、ブレーキランプなどがついていなかったことがわかった」「ドライバーがブレーキを踏まなかったため制動できなかった」と指摘し、自社の車に責任はないといった趣旨の主張を展開した。
23年1月にはテスラの「モデルS」が米国カリフォルニア州の高速道路を走行中に、突然発火して炎上するという事故も発生しているが、いずれの事故でもテスラは事故の経緯説明をせずに原因は不明のままとなっている。