「一言でいえば『割高でも売れる』ということに尽きる。薄々気が付いているお客さんも少なくないと思うが、特に節分の日当日は恵方巻きを販売する代わりに、日常的に販売している割安な巻き寿司を取り扱っていなかったり、大幅に陳列する量を減らしてるケースが多い。恵方巻きの価格は通常の巻き寿司の2~3倍ほどするが、1本あたりのボリュームは大きくなるものの、中の具材は通常の巻き寿司で使用しているものと大きく変わるわけではなく、酢飯と海苔は同じ。さらに大手流通企業は大量仕入れで仕入れ価格を安く抑えることができるので、商品単体での利益率は高くなる。わざわざ恵方巻きを買うという目的でスーパーに行く人はそれほど多くはないが、やはり日本人にとって恵方巻きは目に入るとつい食べたくなる料理なので、スーパーで見かけると少し高くても買ってしまう。大きめのスーパーだと1日だけで千本単位で売れるので、仮につくったうちの1~2割が値下げや廃棄処分となっても十分に利益は出る」
それでも近年では小売業界のなかで食品ロスを減らそうという動きは広まりつつあるという。
「食品ロス削減がここまで社会的な問題と認識されれば、特に大手の小売企業は企業の社会的責任という観点から廃棄処分削減に取り組まざるを得ない。また、ここ数年は原材料価格の高騰もあり、より厳格に需要予測を行って極力仕入れコストを抑制しなければならないという事情もある。ただ、惣菜や生鮮食品の品ぞろえの豊富さというのは、スーパーの集客を大きく左右する要素なので、欠品が目立つという状態は好ましくないし、販売機会の損失にもつながる。都市部で駅周辺に複数のスーパーがあるケースだと、会社帰りの人がどのスーパーに行くのかを選ぶ際に『あそこは惣菜や生鮮食品の品ぞろえが悪いから別の店にしよう』という行動になる。なので、店側としては夜遅い時間でも商品を多めに棚に出しておく必要に迫られ、結果として廃棄の量が増えてしまうということもある」
(文=Business Journal編集部)