ダイハツ工業の認証試験における不正の影響は、余波が広がり、いまだに収束が見通せない。ダイハツの“城下町”といわれる滋賀県竜王町にも、大きな禍根を残すことになりそうだ。
ダイハツは昨年、認証試験における不正が発覚し、現在も全車種について出荷停止措置が取られている。第三者委員会の報告書によると、不正行為は174個、全64車種に及ぶ。1月24日には、ドアロック作動の検証が不十分で衝突時にドアが開かなくなる恐れがあるとして、新たに「キャスト」と「ピクシスジョイ」の2車種計32万2740台のリコールを国土交通省に届け出た。
ダイハツは23日、稼働停止している国内工場のうち大阪の本社工場、滋賀工場、そして子会社ダイハツ九州の大分工場、福岡久留米工場、京都工場の一部の生産ラインを2月16日まで停止を延長すると発表した。
ダイハツの工場停止は、ダイハツの従業員のみならず、子会社や関連会社、サプライヤーなどの取引先にも大きな影響を及ぼしている。そして、ダイハツの工場がある自治体にも甚大な影を落とし始めている。特に滋賀県竜王町は、人口1万人あまりのうちダイハツ関連の従業員が約4000人に上り、税収の多くをダイハツが占めるなど、同社への依存度が高く、ダイハツの“城下町”ともいわれ、騒動の余波が長引けば、行政にも大きな影響を与えかねない。
そこでBusiness Journal編集部は竜王町に、ダイハツ不正の影響について話を聞いた。
――税収の半分以上をダイハツに頼っているとの報道がありますが、事実でしょうか。
担当者「税収の半分以上というのは語弊がありますが、法人町民税や固定資産税の約5割をダイハツが賄っているというのは事実です」
――税収減も見込まれるほか、雇用面でも不安が出てくる可能性もあります。行政にも影響は出てきているのでしょうか。
担当者「現時点で行政の施策に変更はありません。情報収集をしている段階で、関係各社の声を拾い上げ、その後必要に応じて県や国に要望を出すということになると思います」
――竜王町では子育て世帯に3年間、ダイハツ車を無償貸与する制度がありますが、その制度は現在も運用されているのでしょうか。
担当者「その制度は現在停止しています。発表されている通り、(リコール対象になっている車種を除き)市販されたクルマはそのまま乗り続けても差し支えないということなので、すでにダイハツ車を利用している町民には、そのまま利用していただいていますが、今後制度を利用したいという方には『意向届』を出していただき、制度が再開したら順次貸し出しをすることになります」
――公用車もすべてダイハツ車であるとのことですが、それも引き続き使用しているのでしょうか。
担当者「はい。こちらも使用には差し支えないとの判断なので、使用し続けています。今後については未定です」
――ありがとうございました。
ダイハツの不正発覚によって竜王町の行政サービスに不安が出ているわけだが、これは竜王町に限ったことではない。一私企業の発展とともに栄えてきた“企業城下町”は全国各地に存在しており、その企業の業績の浮沈によって税収や雇用情勢が大きく左右されることになる。
かつては、炭鉱の町や造船の町などが時代とともに衰退していった例があるが、経営が安定しているとみられていた企業が不祥事などで営業停止に追い込まれると、ダメージは計り知れない。竜王町の町民のみならず、ダイハツの復活を待ち望む人は多いことだろう。
(文=Business Journal編集部)