奨学金の返済苦で自殺も…背景に貸与基準の緩和、多額の借金という理解の欠如

小林 財源が書かれていないので、財源をどう確保するかが問題です。未来戦略方針に書かれた施策のうち、後払い制度は自民党が以前から提言していましたが、財務省の反対で実現していません。後から返済されるのですが、最初に投入する財源がないという理由と、お話ししたように100%返済される保証がないからです。ただ、後払い制度は自民党の総裁選で岸田さんが所信表明演説で述べていますし、骨太の方針にも書かれているので、財務省は反対しにくい状況です。

――返済が困難になった場合、相談先はJASSOが望ましいのか、それとも弁護士や司法書士などが望ましいのか。JASSOは債権者側で、士業は債務者側という立ち位置の違いがありますが、いかがでしょうか。

小林 状況によって違うと思います。金利が加算されて借入額が数百万円に膨らんだ状態で一括返済を迫られた場合は、弁護士でないと対応が難しいです。一方、返済が一時的に難しくなった場合はJASSOの救済制度も以前より整備されているので、JASSOに相談するのがよいでしょう。

――奨学金制度の制度設計や運用について、国に提言したい政策は何でしょうか。

小林 私は授業料後払いはすぐれた制度だと思っています。大学4年間で払う費用を10年や20年に分割して払う制度なので、負担が低減されます。しかも所得連動方式をとれば、所得に応じて返済するので返済しやすくなります。イギリスやオーストラリアはこの方式を取っていて、しかも源泉徴収です。回収コストが下がるので、源泉徴収がキモだと思っています。所得の低い人は考慮されますが、高い人は住宅ローンがあっても考慮されません。この方法なら「返済することを知らなかった」という問題もなくなりますが。ただ、それでも回収不能は発生します。奨学金とはそういうものだと国民に納得してもらうことがポイントです。

――貴重なお話をありがとうございました。

(文=小野貴史、協力=小林雅之/桜美林大学教授)