損保ジャパン、ビッグモーター不正を黙認・利用し契約増の利益享受か…問題体質が露呈

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ビッグモーターの店舗。編集部にて一部加工(「Wikipedia」より/Asanagi )

 大手中古車販売会社・ビッグモーターが、顧客から事故車の修理を請け負った際に、故意にゴルフボールを入れた靴下を車体に打ちつけて傷を付けたり、ドライバーで車体に引っかき傷を付けたりし、損害保険会社に自動車保険の保険金を水増し請求していたことがわかった。14日付「東洋経済オンライン」記事は、不正を受けて三井住友海上保険と東京海上日動火災保険がビッグモーターの修理工場への、自動車事故を起こした保険契約者の紹介を停止していたなか、損害保険ジャパンのみが再開し、それによってビッグモーターを窓口とする自社の自賠責保険の契約数を増やしていたと報道。同記事によれば、損保ジャパンはビッグモーターの不正の舞台となった自動車修理事業部門に5人の出向者を送り込み、重要な会議にも出席していたといい、損保ジャパンの責任を問う声も広まっている――。

 問題が表面化したのは昨年。前出の損保3社に水増し請求を行っていたと各メディアで報じられたが、ビッグモーターは当初、組織的関与を否定していた。一般的に修理工場がこのようなことを行うのは、業界では常態化しているのか。それとも、ビッグモーターに特有のことなのか。中古車販売店経営者で自動車ライターの桑野将二郎氏はいう。

「自動車保険が適用される修理の際に、整備工場が修理見積を多少高めに算出することは、ないといえば嘘になるかと思われます。当初の想定より部品代が高くついたとか、問題ないと考えていた箇所も修理が必要だったなどという正当な理由で金額が上がることも当然ありますし、そうなることをあらかじめ見越して見積額を高めに設定するという場合もあります。ただそれは、あくまでモラル的に容認される範囲内であって、保険会社も暗黙の了解というか、忖度できる程度のことは大目に見てくれるという認識がお互いにあるでしょう。

 ビッグモーターの件について、大きな問題と考えられるのは、故意に損傷を広げて請求額を上げるなどの悪質な不正行為が全社的に行われていたことです。個人経営や中小企業の整備工場が、さすがにそこまでのことはやらないと思います。不正が明るみになった時のリスクも考えるし、保険会社との信頼関係もありますから。ビッグモーターは組織的に不正を行うことで、整備士一人ひとりの罪の意識を薄めていたというのと、保険修理の売上を上げるための手法についてマニュアル化していたことなどが報道で明らかになっています。

 また、保険会社とのパワーバランスも影響していたのでしょう。これだけのスケールの専業店になると、任意保険の契約数もトップレベルでしょうし、指定工場を多数構えていることから、自賠責保険の販売面でも保険会社にとってはビッグクライアントになるでしょうから、不正行為に対して黙認していた部分もあるのかもしれません」

 ビッグモーターは世間からの批判の強まりを受けて今年1月に特別調査委員会を設置し、「お客様、お取引先様をはじめ関係する皆さまに多大なるご不安・ご?配をお掛けしますことを心よりお詫び申し上げます」とする「お知らせ」を発表したが、その後もラジオなどで積極的にCMの放送を継続。さらに、調査委員会が今月7日に報告書をまとめたが、日刊自動車新聞の報道によれば、損保3社には報告書の抜粋版のみを提出し、悪質な行為の内容や経緯を隠蔽。報告書の内容はいまだに対外的には公表されておらず、5日に出された「特別調査委員会の調査報告書受領に関するお知らせ」もわずか400文字足らずで、「関係者の皆さまにはご迷惑とご心配をお掛けしておりますことを深くお詫び申し上げます」などと記されているにとどまっている。