ビジネスを大きく左右する「最強のビジネス会食・攻略マニュアル」…損得勘定は禁物

――すると、会食スキルをあまり軽く考えないほうがいいですね?

yuuu そうです。私は新卒1年目から2年目にかけて、謙遜でも何でもなく、まったく仕事のできない社員で、クライアントとの関係が築けず、社内でも怒られてばかりいました。社内で一番価値がないといわれた伝書鳩のような仕事しかできなかったのです。その時期に、上司から「お前は何もできないんだから、会食ぐらい自分で仕切れよ」と言われ、まず会食の仕切りからがんばろうと思って、いろいろと考えて仕切るようになりました。場数を踏んだ結果、信頼関係を構築できなかったクライアントと関係を構築できて、ビジネスを進められるようになりました。「こいつは仕事のスキルはまだまだだけど、相手のことを思って真剣に動いてくれている」と感じていただけて、仕事が上手く進むようになったのです。仕事の出来が良くない人ほど、会食の仕切りに強みを見出すと最終的に仕事につながると思います。

お互いに解決できる仲間になることが目的

――会食を行う時期は、契約のアプローチをする段階、契約が決まった段階、取引の途中段階、終了段階など、どのタイミングがふさわしいのでしょうか。

yuuu 会食は人間関係をより深めるための手段なので、初期段階で設定すると「こいつらは貸しを作ろうしているのか?」「会食の場で何か仕掛けてくるのか?」「人間関係だけで丸め込もうとしているのか?」と見られてしまいがちです。一定程度ビジネスが進んで関係性ができた時が、最初のタイミングです。何かしらハードな交渉が発生しそうな前で、お互いに腹を割って「ぶっちゃけ、どうなの?」と言い合える関係をつくることを目的とする場合が多かったです。それから、これから大きなトラブルが発生することが予期できるタイミングです。トラブルが起きた時に、お互いに解決できる仲間になることを目的としていたパターンもありました。

――プロモーションだけでなく、リスクマネジメントの目的もあるわけですか。

yuuu そうです。ただ、リスクが生じていることを相手に勘付かれてはダメで、相手側に明確な意図を察知されないタイミングが大事です。意図を察知されたら会食自体がなくなる場合もありますので。

――店を選ぶ場合、エリアの選定はどう考えればよいのでしょう? 先方のオフィスから移動しやすいエリアとか、先方の帰宅に便利なエリアとか、いくつかの基準があると思います。

yuuu 正解はありません。会食相手が複数の場合、帰宅に便利なエリアは、Aさんにとって便利ならBさんにとっては逆方向で不便になりがちです。オフィスからの移動を考慮したほうがよいでしょう。無難なエリアとしては日系企業が集積している神田から新橋にかけてのエリア、会食相手がスタートアップ企業なら渋谷に所在することが多いので、渋谷、恵比寿、青山エリアなどがよいと思います。

――メニューはコースとアラカルトのどちらを選んだほうがよいのですか。

yuuu 難しい問題です。相手がどれだけ酒を飲むかにもよりますが、会食費用を予算の範囲内に収めるには、飲み放題付のコースを選んだほうがよいといえます。いまどき日系大手企業でも、会食予算は参加者1人あたり8000円程度です。アラカルトを選んで、仮に会食相手がワインリストを見てボトル1本をオーダーすれば、それだけで1万5000円以上がかかってしまうかもしれません。こちら側の同席者に社長や役員など予算の裁量権を持った人がいれば対処できますが、同席者が中間管理職の場合、そうはいきません。その中間管理職が身銭を切る事態になってしまいます。若い人は自分よりも上司のほうが自由に使える金を持っていると思っていますが、現実は逆です。上司のほうが使える金を持っていないのです。