日本の放送法の特徴は、NHKと契約しなければならないということだが、海外では必ずしもそうなっていない。そして、海外では受信料制度をやめようという動きがトレンドだ。その理由は、有料の動画配信が増えているからだ。テレビの受信料を払って、動画配信も複数見るとなると、やはりNHKはいらないのではと考える。これは日本だけの現象ではない。世界中の現象だ。
――「受信料制度」を廃止して、NHKをどのようにすればいいですか。
放送と動画配信に分け、放送はタダにして、動画配信を有料にして収益を上げる。それは公共放送であるNHKも民放も。動画配信であれば誰がどのくらい見ているか把握できる。放送では把握できない。世界的なトレンド、とくに先進国で進んでいる取り組みは、電波をオークションにかけて売っている。イギリスでは、1兆円近い税収を上げている。これを国家予算に回している。今後はドローンでも電波を使うので、電波が足りなくなる。放送用の電波を売っても、動画配信は通信回線を使うから問題ない。従量制なので、見ない人はお金を払う必要がない。
それから、放送にはとてつもない量の電力を使う。放送局は巨大な設備を使って、大きな電力を使っている。見る側のテレビも電力を使う。エネルギー消費にとっても、カーボンニュートラルにも良くない。
――以前から「スクランブルをかけるべき」という声もあります。
スクランブルをかけるにしても、放送法を改正しなければならない。だったら、そのエネルギーを受信契約義務化解消へと向けるべきだ。憲法違反なのだから。放送をタダにして、動画配信は有料にする。その同じプラットフォームにNHKも民放も入れば良い。
――NHKは組織の肥大化も問題視されています。
現在の放送法は戦前のものとは違うが、戦後、GHQはNHKを解体して地方局を独立させようとしていた。自治体のなかで目指した番組作りをして、自治体の寄付金と交付金で自立して運営していけと。受信料を取らせない方針だった。しかし、NHKは全国的なネットワークを手放したくなくて、全国放送の組織を維持すべくGHQに取り入って、受信料制度を維持させた。だから、受信料制度を続けていると、絶対ダウンサイジングなんてやらない。彼らはさらに肥大化して、もっと給料をもらうために、受信料を上げようとする。初めから受信料の正体はNHKの組織の維持費だ。
――現在の受信料制度を続けると、他の悪影響も指摘されています。
放送業界で問題なのは、番組制作会社にお金が流れないということ。多くの人はNHKの番組をNHKがつくっていると勘違いしている。以前、NHKへ調査に行ったとき、担当者が「この渋谷のセンターにNHKの社員はどのぐらいいると思いますか」と聞いてきた。私は「半分ぐらいですか」と言ったら、「いやいや、20~30%です」と。7~8割は外部の人間ということだ。NHKの番組は自身でつくっているわけではない。社外に制作を委託している。
――その構造は、民放とまったく変わらないですね。
民放よりひどいかもしれない。NHKエンタープライズのような子会社が、外部の番組制作会社に孫請けに出す。やはり、制作会社にお金がしっかり渡るような仕組みをつくらないといけない。制作会社のジレンマは、良い番組をつくれば収入がそれだけたくさん得られるかというと、そうではないということ。そうすると、制作会社の立場からすれば、Netflixやamazonプライムの番組を優先的につくったほうがいいと考える。そのほうが見返りがあるからだ。制作費がさらにかかるような仕事のオファーが来るようになる。