その上で、2023年4月から6月末まで、「借換え金利引下げキャンペーン」が実施されます。それによって、やはり図表1にあるように、2.341%の基準金利が金利引下げによって0.296%に下がります。0.2%台で利用できるのはそれまでは「auモバイル優遇割」と「じぶんでんき優遇割」の適用を受けられる人だけだったのですが、借換えの人であれば、自動的に0.2%台の金利が適用されるようになったわけです。
しかも、ここでも「auモバイル優遇割」と「じぶんでんき優遇割」が実施され、優遇割によって0.1%の金利引下げが実施され、適用金利は0.196%になります。auじぶん銀行では、0.1%台の金利は、auじぶん銀行初のこととしていますが、恐らく、わが国でも初めての0.1%台の住宅ローンではないでしょうか。
これによって、どれくらい負担が軽くなるのでしょうか。借入額4000万円、35年元利均等・ボーナス返済なしの場合で試算すると図表2のようになります。メガバンクなどで利用できる0.375%の変動金利型だと、毎月返済額は10万1639円で、年間返済額は約122万円です。それが、0.196%だと毎月10万円を切って、年間返済額は118万円ほどに減少します。年間では4万円近く負担が軽減されます。
さらに、固定金利型と比較すると一段と違いが明確になります。全期間固定金利型のフラット35の2023年4月の金利は1.76%で、毎月返済額は約13万円近くに達し、年間返済額は150万円を超えます。0.196%と比べる、毎月では3万円近い差で、年間では実に35万円近い負担の違いになります。諸物価高騰の折、この負担軽減メリットは大きいのではないでしょうか。
住宅ローン | auじぶん銀行 (jibunbank.co.jp)
これだけの違いがあれば、多少のリスクを覚悟しても変動金利型を利用したくなりますが、そのためには、図表3のような条件を満たす必要があります。auモバイルを利用している人であれば比較的手軽に利用できるかもしれませんが、そうでない人は回線変更の手間ヒマがかかるので注意しておく必要があります。と同時に、変動金利型を利用するときには、改めて変動金利型の金利リスクをシッカリと確認しておきましょう。変動金利型は、借入後には半年に1度金利が見直され、5年に1度返済額が見直されます。金利が上がれば、返済額が増えてしまいます。
返済額増額の場合には、増額率を25%までに抑えるというルールがありますが、逆にいえば、5年後には返済額が最大では25%増える可能性があるということです。返済額見直しまでの5年の間の金利変化は、毎月返済額はそのままに、毎月返済額の利息分と元金分を調整することで対応します。金利が下がれば利息分が減って元金分が増え、当初より元金の減り方が早くなります。
図表3 au金利優遇割の適用条件
・auモバイル優遇割の適用条件
(1)auじぶん銀行口座へ登録したauIDの回線がauの家族割プラスに加入していること
(2)(1)の回線を含め、家族割プランのカウント対象が2回線以上存在していること
(3)auじぶん銀行の住宅ローンを借り入れること
(4)住宅ローンの適用判定日までに住宅ローン契約手続きが完了していること
・じぶんでんき優遇割の適用条件
住宅ローン手続申込完了までにauエネルギー&ライフ株式会社が提供する「じぶんでんき」を申し込むこと
反対に金利が上がると利息分が増えて、元金分が減ってしまいます。元金の減り方が遅くなり、なかなか元金が減りません。最悪の場合、「未払い利息」が発生して、約定通りに返済しているのに元金がまったく減らず、むしろ「未払い利息」という名の残高が増える恐ろしい事態になります。現在の経済環境下でそんなに大幅な金利上昇は考えにくいのですが、それでも5年後には最大25%返済額が増えるリスクがありますから、多少の増額に耐えられるような返済計画を立てておく必要があります。金利0.1%台の超低金利メリットを享受するためには、それぐらいの慎重な計画が欠かせません。
(文=山下和之/住宅ジャーナリスト)