米調査会社のガートナーが1月17日、2022年の世界半導体売上高ランキング・トップ10の速報値を発表した。それによると、1位は韓国サムスン電子(656億ドル)、2位は米インテル(584億ドル)、3位は韓国SKハイニックス(362億ドル)等となっている(図1)。
ガートナーは、このようなランキングにファウンドリを入れない。しかし、筆者は台湾積体電路製造(TSMC)がどのポジションにくるかを知りたい。そこで、1月12日に行われたTSMCの決算報告会の資料を調べてみると、2022年の売上高が758.8億ドルであることが分かった(図2)。
これは、ガートナーのランキングで1位のサムスンを上回る売上高である。つまり、2022年の世界半導体売上高ランキングで、TSMCが初めて第1位になったということである。
ガートナーの速報値に、TSMCの業績を加えたグラフを書いてみた(図3)。なお、日本企業が1社もないのは寂しいので17位のキオクシアも書き加えてみた。このグラフから、どのようなことがいえるだろうか。
第一に、2021年から2022年にかけて、ファウンドリとファブレスの多くが大きく成長した。上位から順に、1位のTSMCが33.5%、5位の米クアルコムが28.3%、7位の米ブロードコムが26.7%、8位の米AMDがなんと42.9%、11位の米アップルが20.4%となっている。なお、10位の台湾のファブレスのMediaTekだけが3.5%の成長に留まっている。スマホ用や通信用半導体で米クアルコムなどにシェアを奪われたのかもしれない。
第二に、インテルとメモリメーカーが軒並みマイナス成長に陥っている。上位から順に、2位のサムスンが-10.4%(ひどい)、3位のインテルが-19.5%(ひどい)、4位のSKハイニックスが-2.6%(軽微)、6位の米Micronが-3.7%(軽微)、17位のキオクシアが-13%(ひどい)となっている。この原因は、コロナ特需が終焉して、PC需要が急激に縮小したこと、およびメモリ価格が大暴落したことにあるだろう。
このようにサムスンとインテルに急ブレーキがかかった結果、成長著しいTSMCが売上高で初めて世界1位になった。TSMCは2022年12月29日に3nmの量産を開始したと発表した。したがって、TSMCは売上高でも微細化でも世界チャンピオンになったわけだ。
それにしてもTSMCの快進撃はすさまじい。図2の決算報告書を見てみると、2022年の営業利益率(Operating Margin)が49.5%となっている。筆者は、これほど高利益率の半導体メーカーを見たことがない。また、ここ数年の売上高の推移を見ると、2019年に346.3億ドルだったものが、わずか3年後の2022年に2倍以上の758.8億ドルに成長している(図4)。
過去の経緯を振り返ってみると、2011年以降、上位3社がインテル、サムスン、TSMCに固定された(ただし2018年に1度だけSKハイニックスがTSMCを抜いて3位になった)。1992年以降1位の座に君臨し続けてきたインテルは、2018年に初めてサムスンに抜かれた。2019年と2020年は再びインテルが1位に返り咲いたが、2021年に僅差でサムスンが1位となった。そして2022年、サムスンとインテルが大きく売上高を減らすなかで、2019年以降、急激に売上高を伸ばしてきたTSMCが初めて世界1位の座を獲得した。