為替変動によって取引時よりも入金が多く、企業が得をした状態となるため「為替差益」として営業外収益の区分に表示され、営業(本業)以外の損益を含めた利益である「経常利益」に影響を及ぼします。
仕入・売上などの取引後、決済が未了のまま決算をむかえる場合もありますが、この場合にも為替変動によって損益計算書へ影響を与えます。未決済の場合には入出金予定額を決算時為替レートを使って日本円へ換算し、取引時との差額は決済時と同じように営業外損益区分の「為替差損益」として表示されます。
たとえば、取引時売上高が1,000ドル、取引時為替レートが1ドル110円、決算時の為替レートが120円の場合を考えてみましょう。
・売上高:1,000ドル×110円=110,000円…?
・決算時:1,000ドル×120円=120,000円…?
・為替変動による差額:?120,000円-?110,000円=10,000円
為替変動によって取引時よりも入金予定額が多く、企業が得をしたような状態となるため「為替差益」として営業外収益の区分に表示され、営業(本業)以外の損益を含めた利益である「経常利益」に影響を及ぼします。決済時と異なり実際の入出金による損益ではないため、その後の為替変動によっては、為替差益が増える可能性もありますし、為替差損(入金額が取引時よりも少ない状態)側に振れる可能性もあります。
急速な円安といった特殊要因で業績に影響がある場合、売上高や利益の数字だけに注目すると、決算書を読み誤る可能性もあります。為替変動によっては、ドル建ての決算書では減益と業績不調なのにもかかわらず、日本円へ換算すると決算書上は増益となることもあるためです。また、今回は触れませんでしたが、海外取引比率が高い企業であっても為替変動リスクをおさえる対策(為替予約など)を講じていて、為替変動による影響が決算書にあまり出ない企業もあります。
決算書の数字だけで業績の変動要因まで見極めることは難しいですが、上場企業であれば決算説明資料などで為替変動による影響について説明されている場合もあります。決算書の数字だけでなく非財務情報も参考にすると、より理解が深まると思います。
今回は日本国内企業の損益計算書へ影響を及ぼす重要なポイントについてお伝えしました。次回は海外に拠点(子会社)をもつ場合に、決算書上どのような影響があるのかお伝えします!
(文=徳光啓子/公認会計士、税理士法人タックス・アイズ)