評議員会は、学外者を一定割合以上確保した上で教職員や設立関係者などの構成により、私立大学の公共性と健全な発達に資する仕組みとする。また、この構成のバランスは学校法人の特徴や規模等により一律に規定しない。
2.意思決定のスピードの鈍化
評議員会の議決を要する事項は、法人としての組織・運営の基本的なあり方や業務の基本方針に関する事項に絞るか否かも含めも法律で一律に規定せず、学校法人の自律性に基づき決定できる仕組みとする。
3.学内の対立構造の先鋭化
理事の解任手続は、監事と評議員会の連携により、法令違反等の事由や職務執行状況に関する監事の意見に基づいて、評議員会と異なる第三者などの委員会を活用する仕組みを講じることが適切であり、ガバナンスの正当性が高めると考える。
同連盟が最も強調したいことは、第1の提案にある「学外者のみの評議員会の構成」である。私学特有の建学の精神に基づく教育に理解を有し、かつ現在の多様化する教育プログラム、文理融合やカリキュラムの有機的連携、大学間連携などの各テーマにも精通する人材を学外から十分に確保することができるのだろうか、という疑問が背景にあるからだ。むしろ、私大の教育研究活動に大きな混乱をもたらすという懸念だ。
第2の提案については、評議員会に最終的な意思決定を任せると大学経営意思決定のスピード感がなくなり、教学と経営が一体となって迅速かつ的確な判断ができず、機能不全になる可能性が高いことを懸念する。
第3の提案では、不祥事に対応するならば、該当する理事の解任など決定する独立した第三者委員会を設け、監事と協議決定するほうが、ガバナンスの上でも適切である、としている。
第3案などは、歩み寄りが可能であろう。ただ、学外の人のみによる評議員会に絶大の権限を与えることには、相当反発が強い。
基本的なことは、大学の現状を踏まえて、何よりも教育・研究を担う大学教員の意見を最大限尊重し、大学経営に反映させていくことである。
実は日大でも、そのような教員の活動があった。執行部の責任を追及する「新しい日本大学をつくる会」である。しかし、法的資格を問われ、裁判でも門前払いの結果となった。教職員労組などとも連携して、内部からの声を大学経営に反映させるルール化を進めるべきである。
それには徹底した情報開示が必要だ。利害関係者でもある理事や評議員のみならず、全教職員はもちろん当該大学生やその保護者、OBやOGなどにアプローチできるように情報を開示すべきだ。
確かに、有識者会議の提言にあるように評議員をオール学外メンバーにして権限強化を図ると、日大のような理事長専横は防げる可能性は高いが、大学の教育研究の向上を図れるかというと、心もとない。
社外取締役を多数登用し、ガバナンス重視の見本と言われた民間有名企業で続く不祥事を見ればわかるように、利益追求の企業風ガバナンスでも実効性は確保できていないのが現実だ。
大学のガバナンスを実現するベースには、何よりも教職員の責任感と自覚があり、それを支える学生とOBやOGの共感がなければならない。そうでないと、器だけ作っても機能しないことになる。自学の知的資源をガバナンスにも生かすべきである。
(文=木村誠/大学教育ジャーナリスト)
●木村誠(きむら・まこと)
早稲田大学政経学部新聞学科卒業、学研勤務を経てフリー。近著に『「地方国立大学」の時代?2020年に何が起こるのか』(中公ラクレ)。他に『大学大崩壊』『大学大倒産時代』(ともに朝日新書)など。