――昨年、今年とコロナ禍のなかでドローンはどのように活用されたのでしょうか。
鈴木 コロナ禍のなかでいろいろな活用の場が広がりましたし、私どもはドローンスクールを認定しているのですが、ドローンスクールで資格を取ろうという人たちもコロナの影響で減少するどころか、逆にこういう時期だからこそ新しい技能を身につけようという人が増えたようです。
――ドローンの有資格者は、日本に今どのくらいいるのでしょうか。
鈴木 まだ国の認定資格になってはいませんが、JUIDAだけで1万5000人ぐらいで、その他の団体も含めると数万人規模になると思います。JUIDAだけでもだいたい毎年5000人づつ増えています。
――ドローンの活用法ですが、昨年はどのように使われていたんでしょうか。
鈴木 これまでのように農業、土木測量、写真撮影などのような使われ方もあるのですが、コロナ禍という視点で見ますと、上空から緊急時にアナウンスをしたり、災害時の状況把握や物資輸送などで活発に使われるようになりました。海外ではPCRの検査キットや検体を運ぶことでも使われています。日本ではまだ薬機法の規制が厳しいので、そこまではできていません。ただ災害などで医薬品を届けることなどはできるようになりつつあります。
――離島への医薬品輸送は今、どの程度までできるようになっているのでしょうか。
鈴木 今年の夏までに新たなガイドラインが出されると聞いています。離島や災害時という限定された用途ですが、だんだんと広がっていくのではないかと思います。
――ドローンは昨年、災害ではどのような活躍をしたのでしょうか。
鈴木 例えば赤城山の山火事でドローンが状況把握に活用されました。一方で今年2月に許可を得ていない方々が、足利市の山火事でドローンを飛ばしてしまいヘリの消火活動を妨げたという事件がありました。それ以来、消防や救助のヘリコプターが飛行する指定された空域では、自治体から要請を受けたドローンでないと飛ばしてはいけないという規制がかかるようになりました。災害時にはヘリコプターも飛びますので、ヘリコプターにぶつかってしまうと大きな災害につながってしまいますから。
――ドローンの運行管理システムは現在、どこまで整備されているのでしょうか。
鈴木 すでに商用化されていまして、民間でそうしたサービスを提供しています。ただ、まだそうした運行管理システムを活用するような使い方はされていないのが現状です。物流で目視外まで飛ばそうとすると、そうしたシステムで管理しなければならなくなります。米国の場合は、空港周辺でドローンを飛ばす人は必ず運行管理システムにつないで、自分がいつどこで飛ばしているのかという情報をリアルタイムで監視できる状況でないと飛ばせません。空港周辺は飛行機と出会う状況がありますので、空港ごとにそうしたシステムが置かれています。
――産業用ドローンの実用化はどこまで進んでいますか。
鈴木 工事現場の点検、建物の点検、農薬散布などで活用されています。農薬散布がもっとも多く、建物の点検なども増えています。今後は物流、警備などでも活用されていくと思います。
――警備ではどの程度利用されていますか。
鈴木 刑務所内の巡回や工場の敷地内などで一部使われていますが、まだそれほど使われていません。航空法の規制がありますので、第三者の上を飛ばすということがほとんど許可されません。試験的にスタジアムの夜間警備などで使うなどの実証実験が行われています。「レベル4」という有人地帯の上空を飛ばしやすくするための航空法改正案が、6月4日の参議院本会議で可決、決定しました。これから22年中の施行に向けて制度を詰めていくわけです。そうしたことができてくると、街中はまだ難しいですが、人がまばらに住んでいるようなところでは使いやすくなると思います。