「賠償」とは「損害を補償する」という性質上、加害者が個人であろうが企業であろうが、認定された補償額以上は受け取れません。にもかかわらず、たとえば企業のトラックが起こした事故で被害に遭われた方が、「事業者が起こした事故だから、加害者が個人の場合より多く保険金を受け取ったらしい」という風評被害で悩んでいらっしゃる方もいます。
自動車事故で、人に関する補償は身体のケガだけが対象だと思っていらっしゃる方が多いですが、実際のところはどうなのでしょうか。
「身体的なケガだけでなく、精神疾患も補償の対象にはなります。ただし、事故で精神疾患を発症された場合、専門医の所見を元に、事故との因果関係を慎重に判断することにはなります。因果関係が認められ、休業したり、退職したりとすると、逸失利益に反映されます。また被害者の方が人身傷害保険に加入していると、『後遺障害』ではなく『傷害』として補償します。同じ事故であっても、被害状況が違えば、被害者の方の賠償額は一人ずつ違ってきますし、支払い時期も当然異なります」(大手損保広報担当者)
因果関係が認定されれば、事故の原因による精神疾患も補償の対象になる場合もあることは、覚えておきたいですね。
「通常は事故が発生したら、保険会社同士で話し合います。一方で、示談交渉ができないケースもあります。たとえば、信号待ちで停車中に追突される、自宅の塀に車がぶつかって塀を壊された、信号が青になり横断歩道を歩行中に車が信号を無視してぶつかってきた等、補償を受けられる方に責任がまったくない“もらい事故”です。この場合、保険会社が示談交渉することはできませんので、被害者ご自身で交渉していただくことになります。損保協会のデータでは、もらい事故は自動車保険の賠償事故のうち約3件に1件の割合で発生し、全国で年間約200万人の方がもらい事故にあっていると推計されます」(大手損保広報担当者)
私が業界紙の記者時代に交通事故裁判を担当していた経験から言えば、自動車事故は弁護士でも経験がなければ非常に難しいと痛感したものです。一般の方が、もらい事故に遭えば、自分で交渉しろと言われても困り果ててしまいます。どうすればいいのでしょうか。
「弁護士費用特約をセットすると安心です。弊社では『もらい事故アシスト』と呼ぶこのオプションは、相談料から報酬まで弁護士にかかる総トータル費用を、一定の限度額内であれば保険で支払うことができます」(大手損保広報担当者)
逆にいうと、被害者のご遺族が自動車保険で弁護士費用特約をセットしていなかった場合、遺族の方やケガをされた方が自ら交渉するか、自力で弁護士を探さないといけないのです。示談交渉が難航することもありますので、弁護士費用特約は付帯しておくと安心です。
また、示談交渉の際の重要な証拠映像が撮れるとなるドライブレコーダーは装着をオススメしたいものです。大手損保各社の商品は、ドライブレコーダーによる運転診断をオプションでセットできます。高齢者の運転免許の返上は話題ですが、なかには耳を貸さない高齢者も一定数います。そんな方にも客観視していただける判断材料として非常に有効だと考えます。
ネット保険は「安い」というイメージがあります。そのため、「対人・対物無制限といっても、代理店型損保の対面販売と比較すると補償内容が違うのではないか」という疑問です。