年1500億円超も稼ぐ「アンパンマン経済圏」の凄み

アンハ?ンマンは非常にユニークな存在だ(写真:active hot shop / PIXTA)
日本の乳幼児からの人気は不動のトップの「アンパンマン」。アニメや本におもちゃや食品など関連グッズを含めると独特な経済圏を形作っている。年間1500億円超とみられるアンパンマン経済圏はどのように成り立っているのだろうか(本記事は新潮新書『アンパンマンと日本人』の第1章からの抜粋です)。
 

いったいアンパンマンはどれだけ稼いでいるのか。

米TitleMax社が発表した2018年までの世界のキャラクタービジネスのビジネス規模を累計したランキングによれば、アンパンマンの累計市場規模は世界のキャラクタービジネスの中で、6位(602億8500万ドル)です。

2019年の1ドル=109円で換算すると6兆5710億6500万円となります。テレビアニメ化されてから30年で6.6兆円を稼ぎ出したことになります。日本勢の中では、1位のポケットモンスター=ポケモン(921億2100万ドル)、2位のハローキティ(800億2600万ドル)に続き、3番目の規模です。

アンパンマンより上位のキャラクターは、ポケモン、ハローキティ、ディズニーのくまのプーさん(3位750億3400万ドル)、ディズニーのミッキーマウス&フレンズ(4位705億8700万ドル)、スターウォーズ(5位656億3100万ドル)だけ。

「世界最強の『マン』」はアンパンマン

アンパンマンは、もともとスーパーマンやバットマンといったアメリカンコミックスの正義のヒーローの“アンチテーゼ”としてやなせたかしが造形したキャラクターですが、アメコミの「マーベルコミック」は11位291億2800万ドル、「スパイダーマン」12位270億7800万ドル、「バットマン」14位264億4800万ドル。ビジネス規模で比較すると、アンパンマンは本家アメリカのスーパーヒーローを抑え、「世界最強の『マン』」なのて?す。

TitleMax社の世界のキャラクタービジネスの上位1~25位のうち、日本のキャラクターは11もあります。1位ポケモン、2位ハローキティ、3位アンパンマン、8位スーパーマリオブラザーズ、9位少年ジャンプ、13位機動戦士ガンダム、15位ドラゴンボール、17位北斗の拳、20位ワンピース、23位遊☆戯☆王、25位トランスフォーマー(日本のタカラトミーと米ハズプロ双方で知財管理)と続きます。

日本の漫画、アニメ、ゲームのキャラクターがいかにビジネスとして巨大な存在なのか、このデータを見てもよくわかりますね。

とりわけ、アンパンマンは非常にユニークな存在て?す。

お客さんは日本の乳幼児が中心なのに世界トップクラスの経済圏を構築しているからです。たとえば、ディズニーやハリウッドのアメコミのヒーローたちは、世界中の全世代が対象です。にもかかわらず、ディズニーのお姫様より、アメコミのヒーローたちより、アンパンマンのビジネス規模は大きい、というのです。

ディズニーをも超える最強キャラクター

「乳幼児市場に限っていえば、日本におけるアンパンマンはディズニーをも超える最強キャラクターです」

キャラクタービジネスに造詣が深いエンタメ社会学者の中山淳雄氏は明かします。「『キャラクターデータバンク調査2021』によると、0~2歳では男児47%、女児49%でともに支持率1位、3~4歳は男児13%(2位)で女児14%(1位)と、『ミッキーマウス』『きかんしゃトーマス』『ハローキティ』といった世界市場を相手にしているキャラクターを上回り『3歳までは誰もが必ずアンパンマン』という不動の市場を作り上げています。ハローキティと並ぶ二大ライセンスキャラですね」