クリスマス直前から大晦日までの期間は、アメリカで映画の稼ぎ時だ。アカデミー賞で健闘しそうなボブ・ディラン伝記映画『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』など、この時期に公開される話題作もまだあるものの、2024年の北米における映画興行収入ランキングを振り返ってみることにしよう。今年の日本のランキング(下表)と相当に違っていて、非常に興味深い。
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昨年の俳優と脚本家のダブルストライキの影響で公開延期が多かったこともあり、2024年の北米興収は、2023年に比べて若干マイナス。今年前半は、『デューン 砂の惑星PART2』が大ヒット、『ゴジラ×コング 新たなる帝国』『ボブ・マーリー:ONE LOVE』などが健闘したものの、『フォールガイ』、『マッドマックス:フュリオサ』などが期待外れに終わり、劇場主たちのムードは明るくなかった。
しかし、6月には、ディズニー傘下ピクサー・アニメーションスタジオの『インサイド・ヘッド2』が公開され、爆発的ヒット。北米興収は6億5300万ドルで、今年のナンバーワン。1億ドル以上のデビューとなった今年初の映画で、世界興収は16億ドルになった。ピクサーは最近、かつてのような勢いを失っていただけに、待ちに待たれた大成功だった。日本では、今年の6位にランクインしている。
そして7月には、やはりディズニー傘下であるマーベルの『デッドプール&ウルヴァリン』が予想以上のヒットに。マーベルもまた、ここのところがっかりの結果が続いていたので、大きな朗報だった。
北米興収は6億3600万ドルで、今年の2位。R指定映画では、メル・ギブソン監督の『パッション』を抜いて史上最高だ(ただしインフレ調整なしの数字)。6月の公開作としても、史上最高の北米デビューを飾っている。公開から2カ月以上もトップ10圏内に君臨したことも特筆すべきだろう。ただ日本ではトップ10に入っていない。
今年の3位『怪盗グルーのミニオン超変身』は日本でも10位にランキングしたが、4位以降は日本と大きく違う。4位は11月下旬にデビューしたばかりのミュージカル映画『ウィキッド ふたりの魔女』。賞レースに食い込むなど評価も高く、ホリデーシーズンにぴったりの楽しい作品でもあり、今月末にかけて数字を伸ばし、ランキングを上げていきそうだ。
5位の『モアナと伝説の海2』も同様で、クリスマス時期を牽引する存在になると思われる。日本は伝統的にミュージカル映画が強いので、『ウィキッド』はおそらく日本でも大ヒットするのではないか(2025年3月日本公開予定)。
6位の『ビートルジュース ビートルジュース』は日本でぱっとしなかったが、これはほかの国でも同じ。この映画は圧倒的に北米で強く、海外市場では北米の半分ほどしか稼いでいない。独特なユーモアのセンスなので納得といえばそうだが、災害映画である8位の『ツイスターズ』が日本を含む海外でそれほど伸びなかったのは、やや意外な感じもする。
6月と7月にディズニーの映画が2本立て続けに成功したのに加え、今年は11月下旬にもダブルの朗報があった。感謝祭前の同じ週末に公開された『ウィキッド』と『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』のヒットだ。