『「組織と人数」の絶対法則』の共著者の1人であるロビン・ダンバー氏は、サルや類人猿の生態を観察しながら、生物経済学を研究してきた人で、1992年の論文で「ダンバー数」を発表しています。
「ダンバー数」以前は、脳のサイズは知性を表すということで、人間は言葉をしゃべり始めたことで脳を大きくしたのだと考えられていました。
しかし、近年の研究で、人類が現代人のような言葉をしゃべり始めたのは、7万~10万年くらい前だろうと言われるようになりました。一方、脳が大きくなり始めたのは、化石から推定すると200万年前です。その当時の人類は、まだ言葉をしゃべっていませんでした。
では、言葉をしゃべっていなかった頃の人類が、脳を大きくした理由は何だろう? そこで、サルや類人猿の脳の大きさと、それに相関するパラメーターを調べた結果、「維持できる集団のサイズ」だとわかったのです。
人類は、200万年前から集団のサイズを大きくする必要が生じたということになり、その相関係数から、現代人の約1400~1600ccの脳には「150人」がぴったり当てはまるということが発見された。これが「ダンバー数」と呼ばれるものです。
200万年前に、脳が600ccを超えたホモ・ハビリス(ラテン語で「器用な人類」)が登場しました。
それまでのアウストラロピテクスと異なり、親指と他の指との対向性がある、非常に器用な手をしていました。それで、初めて「ホモ」という人間の名前がつけられたのです。
ダンバー氏は、そこに集団サイズを当てはめました。すると、脳が600ccを超えた頃の人類の集団サイズは、30人程度だということがわかりました。
脳の大きさと集団サイズは、並行的に対応して進化しており、50人、100人、150人という数字が導き出されます。
その後、ダンバー氏は、これらの人数を現代に当てはめていきます。『「組織と人数」の絶対法則』にも書かれていますが、軍隊の小隊や、宗教の布教集団のサイズなどがそれにあたります。
例えば、30人というと、僕は学校のクラスを思い浮かべます。毎日顔を合わせているから、顔と性格が一致していて、誰かが欠ければすぐにわかる。そのような規模の集団は、かろうじて分裂せずに、1つのまとまりを作ることができるのです。