集団のサイズは、社会のニーズによるもの、あるいは、文化や言葉、コミュニケーションによって変化するものだと言われてきました。つまり、人類が恣意的に作るものなのだと。
しかし、「ダンバー数」が現代に当てはまるとなると、それは違うとなった。これの意味するところは、恐ろしい話です。
集団のサイズは、人類が作った文化によらず、自然にできているものであり、しかも、それぞれの数にきちんとした機能と、維持するための規則が決まっている。我々は、それをどうすることもできないという話なのです。
人間は、人間関係や社会的な行いにおいて、いまだ自然の趨勢による集団の数に縛られているということを示した。これはすごい話です。
ビジネスの世界では、効率性や生産性を高めるために、組織やコミュニケーションの在り方について、さまざまなメルクマールを探っていますが、最も大切なのは「集団の規模」ということになります。
その集団の規模と、集団を維持するために何をするべきかが、本書で語られていますが、特に、半分以上を費やして述べられているのは、リーダーシップについてです。
リーダーは、集団の規模に応じて、どういうことを求めていく必要があるのか。これは本当に目から鱗でしょう。
なかでも、「ダンバー・グラフ」はすごいものです。
まず、結婚相手など、自分が最も信頼するパートナーが核になります。コミュニケーションの核であり、生きていくうえで全面的に頼る人という意味では、自分というものを確立してくれる人とも言えます。
そこから、人数が3倍で増えていくとともに、心理的な近さや管理の仕方が変化していくのです。
最も信頼できる仲間であり、核にもなるのは、「5」という人数です。小回りが利き、それぞれがお互いのことをよく知っている。意見を言えば、すぐに取り上げられます。密接な関係を維持するために、毎日顔を合わさなければなりませんが、リーダーはいりません。
本書には、イギリス軍特殊部隊の例が出てきますが、やはり4~5人と、限りなく5人に近い単位で戦闘に臨みます。ミュージシャンのバンドもそうです。3人編成もありますが、やはりクリエイティブな仕事をする上では、5人くらいが重要だということです。
これに3を掛けると「15」です。ダンバー氏は、日常的な付き合いの60%までを占めているのは、15人という人数だと断言しています。
多様な人が集まって、さまざまな意見を述べることができ、熟議にふさわしい数です。ただし、対立や分裂が起きるので、まとめ役やリーダーが必要です。
さらに3を掛けると「45」。約50人です。きちんとした構造とリーダーシップが必要となる集団で、民主主義が成り立つ場所でもあります。
そして、150人という規模へ飛躍するときには、何らかのルールが必要になります。つまり、150人が民主主義の限界だということです。
民主主義は、信頼と信用が糧になります。約束を守ってくれるからこそ信頼できる。そういった関係性の中であれば、組織としてのクリエイティビティ、生産性、効率性を高めていくことができるのです。
サルや類人猿の脳から分析された「ダンバー数」が、現代の人間の組織論にぴったり合うというのは驚きですよね。
(つづく)
(構成:泉美木蘭)