「こんな上司に悩みなんて言えない」上司の2特徴

特徴1:部下に共感を表現できていない

私が主宰する経営心理士講座では「どのような話の聞き方をしてくれたら、この人は信頼できると感じますか」というテーマでこれまで数千人の方にディスカッションをしてもらっています。

その内容を統計的に分析していますが、中でも多いのが「共感を示してくれる」という意見です。

人間には自分の感情を誰かと共有したいという「共感欲求」があります。例えば、ものすごく嬉しいことがあったとき、誰かに話して共感してもらいたくなるでしょう。

あるいはSNSに投稿したくなる。そして「いいね!」が欲しくなる。たくさん「いいね!」がつくと嬉しくなるし、全然つかないと切なくなると思います。それは共感欲求を満たしたいからです。

そのため、自分の話をして、その話に共感を示してもらえると、共感欲求が満たされ、相手に心を開こうとします。

共感は心の中で共感するだけではなく、その共感が相手に伝わるように表現することまで必要です。

この表現力の差が「この人は自分の気持ちをわかってくれる」という印象を持たれるかどうかの差をもたらします。

特徴2:話を最後まで聞かない

そして、もう1つ多い意見が「話を最後まで聞いてくれる」という意見です。

自分の話をさえぎって話す人には、人は心を開こうとしません。

ある会社から支店の離職率が高いと相談を受けたときのことです。

社長から依頼され、その支店の支店長のJ氏とお会いすることになりました。J氏は体育会系の雰囲気の元気のよい方でした。

私はJ氏と話し始めて5分もしないうちに離職率が高い理由の察しがつきました。J氏は私が話す度に、私が話し終えないうちに私の話をさえぎって話すのです。

こういうタイプの人は頭の回転が速い人が多く、それが故にせっかちで相手が話し終えるのを待てずに話し始めるのです。こういった話の聞き方をされると、相手は「この人は自分の気持ちをわかってくれない」と感じます。

そこで、部下の方にJ氏の印象についてヒアリングしたところ、案の定、「ワンマンで一方的」「まともに話を聞いてくれない」「自分の気持ちをわかってくれない」「悩みがあっても相談できない」といった答えが返ってきました。

一方、J氏に「部下の話は聞くようにしていますか」と質問すると、「定期的に面談の機会を設けてるので、部下の話は聞いてますよ」と話されました。

J氏は部下の話を聞けていないことに気付かないままマネジメントをし、部下は悩みをJ氏に相談できずに抱え込み、それが離職率の高さにつながっていました。

態度を改めさせる指摘の仕方

そこで部下の方たちの名前は伏せたうえで、ヒアリング内容をJ氏にフィードバックしました。J氏は「なるほど、なるほど」と言いながらも、ショックを隠せない様子でした。

そして、「Jさんは頭の回転がかなり速い人だと思います。だからこそ会話のペースが速くなり、相手の話をさえぎって話すので、共感が疎かになりやすい。それだけ頭がいい人ですから、ペースを相手に合わせて、話をさえぎらず、共感しながら聞くこともできるはず。ぜひそうしてください」とお伝えしました。

こういった指導をする際は、相手のプライドを傷つけないことが重要です。プライドを傷つけてしまうと相手は心を閉ざし、言い訳するなどして言うことを聞こうとしなくなります。

そこでJ氏には、「頭の回転が速い」という点を強調し、優れた人であることを前提として、だからこそ話の聞き方も改められるはず、とお伝えました。

その結果、J氏は私の提案を受け入れてくれました。以降、私も継続的にモニタリングすることで部下に対する関わり方が変わり、離職率も下がりました。

部下から本音を話せてもらえていないことに気付かない上司は少なくありません。そういう上司による面談や1on1は意味を持ちません。

そういった状況に陥らないように、普段の話の聞き方に留意していただければと思います。