別の調査では、やはり同じ最後通牒ゲームをやらせたが、その間、参加者の脳を磁気共鳴画像診断装置(MRI)でスキャンした。その調査では、精神病質の傾向が強い参加者と弱い参加者の間であまり違いがなく、どちらも不公平な提案を同じ回数だけ拒絶した。
だが、その決定を下しているときに、脳の異なる部位が活性化していた。
正常な人々は、不公平な提案を受け容れるか拒絶するかを決めているときに、規範的意思決定――何が正しいか、何が間違っているかの判断――にかかわる脳領域の活動が最も盛んになった。その決定は道徳上のものであり、世の中はどうあるべきかについての情動的手掛かりと結びついていた。
だが、精神病質の検査の得点が高い人々では、この脳領域は比較的不活発なままだった。その代わりに、80円/20円の分割を提案されたとき、サイコパスではずば抜けている脳領域、すなわち怒りと関連した領域が活性化した。
彼らが動揺したのは、これは世の中があるべき姿ではないからではなく、自分にふさわしいと思っている結果が得られなかったのは、彼らに対する侮辱だと見なしたからだった。
これは微妙な違いに思えるかもしれないが、じつは重要な違いだ。しくじるサイコパスは、自分の怒りを制御できない。そして、暴力に訴えかねない。彼らは誰かに80円/20円の分割を提案されると、おそらくその申し出を拒絶し、相手の家を焼き払うだろう。
だが、成功するサイコパスは、その怒りを管理でき、しかも思いやりに突き動かされることがない。彼らの多くがこの組み合わせを使って、階級制の中で昇進していく。彼らはろくにためらいもしないで同僚を踏み台にし、出世する。血も涙もない爬虫類の脳の助けを借りて、スーツを着たヘビになる。
こうした特性のおかげで、ダークトライアドはキャリアに関する選別効果がある。権力に飢えた、ナルシシストでマキャヴェリストのサイコパスは、たとえば慈善活動などには、たいてい引きつけられることがない(ただし、餌食たちの間で目立たないようにするためであれば、話は別だが)。
オックスフォード大学の研究専門の心理学者で、『サイコパス』の著者のケヴィン・ダットンによれば、サイコパスの多い職業を10挙げると、以下のようになるという。CEO、弁護士、テレビ/ラジオのパーソナリティ、セールスパーソン、外科医、ジャーナリスト、警察官、聖職者、シェフ、公務員。
別の調査の結果は、ダークトライアドの特質を持った人は支配的なリーダーシップ――他者を支配することを伴うリーダーシップ――を発揮できる機会が得られる地位、とりわけ金融やセールスや法律の分野での地位に強く引きつけられることを示している。
ダットンは自分のリストに政治家を含めていないが(おそらく、サンプルとなる数がかなり少ないからだろう)、首都ワシントンはアメリカのあらゆる地域のうちでサイコパスの割合が際立って高いという調査結果がある。
ダークトライアドの特性を持つ人の割合が特に大きい地域は、社会の中で影響力がとりわけ強い場所が多い。有害な人は、少数でも大きな影響を及ぼしうる。
少しずつ実態が浮かび上がってきた。サイコパスは稀だが、他の人よりも権力に引きつけられるし、権力を手に入れるのもうまい。したがって、権限のある地位の過剰な割合を占めている。
では、彼らはその権限で何をするのか? 彼らは他者のことなど気にも掛けずに昇進するとしたら、より大きな権力を手にしたときに、さらに人々を傷つけがちなのだろうか?
(翻訳:柴田裕之)