トランプ再登板で日本人の生活はどう変わるのか

(写真:© 2024 Bloomberg Finance LP)

接戦と予想されたアメリカの大統領選挙は、あっさりトランプ氏が圧勝した。来年1月からは「トランプ2」が始まることになる。アメリカ国民はむろん、日本を含めた世界全体の秩序が大きな変化をとげる4年になる可能性が高い。これまでのトランプ氏の言動を振り返ると、世界を分断する人物がまた帰ってきたと言っていい。

実際に、就任前から閣僚人事や公約した政策の実現に取り組んでいると報道されており、パリ協定再離脱、ウクライナ戦争終結に向けて動き出しているとされる。8年前同様に、閣僚人事ではウォール街出身のメンバーが―数多く配置されるだろうと予想されている。

トランプ氏は、今回の選挙戦で負ければ収監される可能性があるとされ、必死に国民の欲求に応えたポピュリズム(大衆迎合主義)政権のシナリオを描き続けてきた。そのためにアメリカ・ファーストを貫かざるを得ず、世界の秩序は大きな変化を遂げる可能性が出てきた。トランプ2がもたらすさまざまな変化について、簡単にまとめてみたい。

トランプ2、最大の焦点は「関税」?

今回の選挙で、再三トランプ氏が主張したものの1つに「関税」がある。議会の承認を必要としない関税率の変更は、トランプ政権にとって主要な武器になるからだ。具体的には次のようになっている。

●中国…… 60%

●その他の国…… 10~20%

●メキシコの自動車産業……200%以上

トランプ氏がこのまま関税をかけてくるかどうかは不透明であり、1期目でも中国に対して、関税をかけられたのは就任してから11カ月後になった。モルガン・スタンレーは、中国への60%と他国の10%の関税が課されれば、アメリカの消費者物価指数は「0.9%上昇」すると予想している。また、ドイツ銀行はアメリカの成長率がマイナスになると予測している。(ウォールストリート・ジャーナル「トランプ氏勝利は米経済に何をもたらすのか」2024年11月7日)

実際、インフレの収束を公約に掲げているトランプ氏にとっては、そう簡単に関税を上げるわけにもいかない。関税が大幅にアップされれば、輸入品は高くなるため、インフレ→金利上昇→ドル高に振れることになり、その効果は薄らぐことになるはずだ。

そもそもトランプ2は、前回と異なり比較的景気の良好な状態で政権を引き継ぐ形になる。この4年間の民主党政権では、確かにロシアによるウクライナ侵攻やコロナ禍の影響からインフレになったものの、株式市場は連日史上最高値を更新し続けており、高い成長率や低い失業率を維持してきた。

好景気の状態を引き継いで2年程度は好景気を保つことができるかもしれないが、関税を大幅に引き上げることでインフレを招き、金利高になって景気が急速に失速する可能性もある。

「減税」「規制緩和」ともにインフレ要因?

一方、トランプ2の経済政策では「減税」を大きく打ち出していることも忘れられない。1期目の2017年に決めた大型減税は、その一部が2025年末で失効するが、この延長を最優先課題に挙げている。さらに、今回の選挙では法人税率を現状の21%から15%にまで引き下げると公約している。これら減税のコストは10年間で約5兆ドル(約770兆円)と言われており、大型減税は景気を押し上げる可能性が高いが、財政悪化も招く。

さらに、トランプ氏は常々金利をもっと下げるべきだと主張している。中央銀行であるFRBのパウエル議長は、現在は低金利に動いているものの、インフレになればまた金利を上げていくことになる。将来的には、両者の確執が目立つことになりそうだ。どちらにしても、関税、減税、低金利が揃えばインフレが再び猛威を振るう可能性もある。