ドラマ脚本も話題「バカリズム」溢れる才能の原点

1999年から『爆笑オンエアバトル』(NHK総合)がスタートし、2000年代にネタ番組ブームが訪れるも、バカリズムに対する世間の評価はそれほど高くなかった。

アンジャッシュの「すれ違いコント」のように定番のフォーマットを打ち出すのではなく、ネタごとに違ったシステムを生み出す“尖ったコンビ”という印象が強かったためだろう。

2005年にコンビは解散。ピン芸人となって間もなく、『R-1ぐらんぷり(現・R-1グランプリ)』(関西テレビ/フジテレビ系)で披露したフリップネタ「トツギーノ」がヒットし、『爆笑レッドカーペット』(同系)でも存在感を示した。しばらくすると、涼しい顔で「トツギーノ」を捨て、本来のコントスタイルで人気を獲得していく。

コントを披露する単独ライブだけでは飽き足らず、番外編ライブ「バカリズム案」もスタートさせ、ピンのネタゆえに観客の想像力をかき立てるような面白さを突き詰めていった。そんな彼が大喜利に強いのは必然にも思える。

ヤンチャな一面も垣間見える

漫画やゲーム好きなどインドアなイメージのあるバカリズムだが、もともと福岡のヤンチャな環境で学生時代を過ごした一面も知られている。それは、バラエティーにおいても垣間見えた。

よく覚えているのが、『そんなバカなマン』(フジテレビ系。2015~2017年レギュラー放送終了)の「そんなバカなホームステイ」での一幕だ。

バカリズム
バナナマンと共演した番組『そんなバカなマン』(写真:FOD公式サイトより引用)

売れっ子となったバカリズムが初心を取り戻すべくYouTuberのBUNZINの動画撮影をサポートする企画で、BUNZINの理不尽な言動に耐えかねたバカリズムが「俺イタいから」「(筆者注:テレビで放送されようが)関係ねぇから!」と戦闘も辞さない構えを見せ、早い段階で釘を刺していた姿が印象に残っている。

また、若手時代に出演した『ウッチャンナンチャンの炎のチャレンジャー これができたら100万円!』(テレビ朝日系)の不眠耐久レース企画で、西村美保(現・金子美保)との一騎打ちの末に82時間47分眠らず優勝。

途中、意識がもうろうとしていたため井手らっきょへの気遣いが至らなかった部分があり、共演者の先輩たちからたしなめられたことも眠気を覚ましたようだが、それを差し引いても強靭なメンタルだ。

勝気な性格とバイタリティーは幼少期から変わっていないようだ。

『QuickJapan Vol.121』(太田出版)のインタビューの中で、バカリズムは「(クラスの権力者ともめて)全員に無視されたときとかもあった」という小学生時代を振り返りながらこう語っている。

「血の気の多い地域なので、腕力が強い子が絶対的な権力者になるし。そこで強い子たち全員とケンカしていってもしょうがないから、いかに少ないダメージで自分の自由を守っていくかっていう。僕みたいに身体のちっちゃいやつが、自分の腕力で手に入る以上の立ち位置を獲得するにはどうすればいいかっていうのは、考えたと思います」

ライブ、バラエティー、ドラマや映画など、幅広いジャンルで活躍するにはクリエイターとしての才能だけでなく、高いモチベーションやタフさが求められる。

昨年2月に放送の『佐久間宣行のオールナイトニッポン0(ZERO)』(ニッポン放送)の中で、テレビプロデューサーの佐久間宣行氏、作家のオークラ氏、東京03の飯塚悟志が、多忙な中でドラマ脚本を書くバカリズムの仕事ぶりに「あり得ない」と口を揃えていたのを思い出す。

その声は、非常にタイトなスケジュールの中で分野の異なる情報を整理、処理していく能力に対する賞賛もさることながら、クオリティーを下げないまま尋常ではない仕事量をこなして尚新たな仕事に向き合おうとする九州男児・バカリズムに対する畏怖の念が込められているように思えた。