バカリズム脚本のドラマ『侵入者たちの晩餐』(日本テレビ系)がアジアの優秀な映像作品を選ぶ「ContentAsia Awards 2024」で最優秀賞にあたるゴールド賞を獲得し、昨年の『ブラッシュアップライフ』(同系)に続いて、バカリズムの脚本作品が2回目の受賞を果たした。
いずれの作品も同じ制作チームが手がけたドラマであり、すでにバカリズム作品に対する注目度の高さがあったことも事実だろう。
しかし、その期待に応えるバカリズムのクリエイティビティーこそがもっとも評価されるべき点ではないだろうか。
脚本家としてだけでなく、バカリズムはバラエティーでも存在感を増してきている。
『バズリズム02』(日本テレビ系)や『家事ヤロウ!!!』(テレビ朝日系)、『私のバカせまい史』(フジテレビ系)といったレギュラー番組だけでなく、昨年に続いて東京03・飯塚悟志との番組『バカリヅカ』(テレビ東京系/全6回)の2ndシーズンが好評を博した。
また、TBS・藤井健太郎氏が企画・演出・プロデューサーを担当する『大脱出』(DMM TV)のシーズン1、2でバイきんぐ・小峠英二とともに見届け人を務め、今年に入って『変顔スパイ』(日本テレビ系)、『ちょっとバカりハカってみた!』(テレビ東京系)、『バカリサーチ社』(TNC制作/フジテレビ系)などユニークな単発番組でもMCを担当している。
毎年ライブを継続し、2022年から恒例となっているドラマシリーズ『ノンレムの窓』(日本テレビ系)で原案・脚本・案内人を務め、今年のドラマ『イップス』(フジテレビ系)で主演を務めていることを考えても、その忙しさは想像に難くない。
なぜ彼は今の時代に求められるのだろうか。その卓越した能力が生まれた背景について考えてみたい。
ドラマ脚本を手がける前のバカリズムと言えば、「大喜利の人」というイメージを抱く方も多いのではないだろうか。
実際、2009年からスタートした大喜利No.1を決定する大会『IPPONグランプリ』(フジテレビ系)の初代王者であり、これまでに6度の優勝という最多記録を持つエリートでもある。
発想力、お題に対する角度、独特なタッチのイラストのほか、いつくもの回答をストックするスピード感、ライバルたちの回答の流れを踏まえた戦略など、競技性のある大喜利において唯一無二の才覚を発揮し、今年は芸能活動を休止しているダウンタウン・松本人志の代理としてチェアマンを務めたのも記憶に新しい。
驚くべきは、学生時代からすでにその片鱗があったことだ。
バナナマン、東京03の単独ライブを長らくサポートしているコント作家・オークラ氏は、著書『自意識とコメディの日々』(太田出版)の中で、自身が芸人として活動していた時代に日本映画学校(現・日本映画大学)の生徒としてマセキ芸能社の事務所ライブに登場したバカリズム(当時はコンビ)の衝撃をこう書いている。
「その時やっていたネタが『恥ずかしい行為を競い合う世界大会で優勝した男のインタビュー』というもので、優勝した選手とインタビュアーが大会を振り返っているだけなのだが、具体的な競技内容も見せず、断片的な情報で大会内容を想像して楽しむというコントだった。
自分が作るシステムコント(筆者注:オークラ氏が個人的に名付けたコントジャンル。主には、演じる世界に1つのシステムを作り、それを前提に話を進め、見る者に理解させたところで展開の仕方、崩し方でさらに笑いを作るコント)よりスマートで、かつ枠からはみ出さないシンプルな構成、そして余計な笑いもないがポイントポイントで確実に笑わせる、すごく美しいコントだった」