ケチャップもカレーも、モヤシにはあまり使わない味付けだが、なんでも試してみようという姿勢が節約道というもの。冷蔵庫にある調味料と食材を、自由に組み合わせてみると思わぬヒットメニューが生まれたりするものだ。
もちろん代用できるものは工夫して使おうと考える。ちなみに我が家にはオーブントースターがない。置き場所がないせいもあるが、パンは魚焼きグリルで焼けばいい。1人分のごはんなら、炊飯器を使うより1人用の土鍋で炊いたほうが時間が早い。お金をかけずに手間や知恵を凝らすというのが、節約の流儀でもある。それが別の趣味を生むことになり、さらに日常が楽しくなる可能性も秘めている。
世の中には、節約のためにこれをしていますというテクニックがあふれている。その代表はポイントやマイルを効率よくためることだ。
筆者の周辺にも達人は多いが、こうした達人は不断の努力家でないとなれない。マイラーは、貯めると決めたら航空会社を固定する。よそのバーゲンセールがあって航空券が安くなってもスルーする。クレジットカードも、当然マイルがたまるカードに集約し、どんなに他社のキャンペーンがあっても浮気をしない。そうして得たステイタスで、航空会社のラウンジで食事やアルコールを楽んだり、マイルで旅行もできるわけだ。
その過程で、「効率よく貯まるコツ」や「参加するとマイルがもらえるキャンペーン」や「マイルに交換できる他社ポイント情報」にやたら詳しくなる。これはもう学問の域だろう。
似たような構図はポイントでも起きるが、もっと面倒なのはポイント自体の種類が多いことだ。しかも、競うように各社がキャンペーンを行い、そこにQRコード決済やらクレジットカードのタッチ決済やら、ツールも複雑化してくる。それをすべて使いこなし、キャンペーン情報を整理して買い物に走る様は、こちらも一種の修行を見ているようだ。
筆者はそこまで求道者にはなれないので、マイルは積極的には貯めないし、ポイントも自分の生活スタイルに合ったものに絞る。節約が趣味としても、不得意なことまでしなくてもいいし、逆に多すぎる節約情報はノイズとして遮断したほうがすっきりする。
前にこの連載で食費節約について書いたが、料理が苦痛な主婦だってごまんといる。そういう人は無理に毎食手作りせずに、1食500~600円程度の宅配食を試してみるのも悪くない方法だろう。やってみて楽しい節約だけを、趣味として取り入れればいい。もちろん、マイルやポイントを貯めるのがことのほか楽しくてたまらない人は、どんどんその道を追求してほしい。
結局のところ、節約というのも手間がかかるものだ。人には得手不得手があり、料理や家事が苦手な主婦(主夫)ならそこに労力をかけるよりも、どんどん働いて収入を増やしたほうがいいかもしれない。
ちょうど10月から最低賃金も上がるし、そうでなくても時給を上げなくては働き手を確保できないのが今の日本だ。また、社会保険加入対象となる企業の規模が、従業員数101人から51人以上に拡大されたばかり。健康保険・厚生年金に加入すると手取りが減って働き損だとかなんだと騒がしいが、年収106万円を超えないようにと考えるのはこの物価高時代に現実的ではない。食費が上がり、サービス利用料が上がり、電気代もガス代ももっと上がっていくというのに、あえて収入を抑える行為に意味がないからだ。
目減り分を取り返すくらいにより働いて収入を増やす。それに尽きる。パート・アルバイトで働く人の多くは社会保険加入へという流れは、今後も止まらないだろう。そうであれば余計にもっと高い時給の仕事を選んで、しっかり働いたほうがオトクに違いない。
節約だけが物価高の対抗策ではない。趣味として面白がれる人がすればいいことで、答えは人それぞれだ。自分に向いているお金の生み出し方を選んだほうが健全だ。できれば、楽しめる方法で。