16億円で取引の鹿島、Jクラブ本当の市場価値は?

しかしながら、欧州の選手人件費率が70%なのに対し、Jリーグは40%と低い。資金を投じていい選手を取り、成績を上げて、収入もクラブ企業価値も引き上げていくという考え方のクラブがもっと増えてもいいのではないでしょうか」と木村氏はクラブオーナーとしての立場から指摘する。

実際、選手の市場価値はクラブ価値に直結するし、SNSフォロワー数にもダイレクトに影響する。2018年にアンドレス・イニエスタが加わった神戸を見ても、クラブの注目度は一気に上がり、ファンも大幅に増えている

そういった大胆なチャレンジ精神を持つオーナーが増えることも、Jリーグ全体の価値を高めることにつながると言っていい。

Jリーグ選手の年俸価値は低く評価されている

「これも残念な話なんですが、日本の場合、選手年俸のグローバル価値は世界のA~Eの5段階中、最低のEという位置づけになっています。昨今は欧州5大リーグで活躍する三笘薫(ブライトン)、久保建英(レアル・ソシエダ)のようなトップ選手も出てきて、100人を超える日本人が欧州各国でプレーする時代になりました。それでもアメリカのMLSなどに比べると低く見られている。そういった現状もぜひ認識しておいてほしいところです」(木村氏)

クラブを本気で買う意欲のある企業オーナーが見つかり、きちんとしたバリュエーション(価値評価)を売り手買い手双方で行って適切な着地点を見いだせるようになれば、正常な資金調達が可能になり、価値増大にもつながるだろう。日本の産業界もM&Aで成長したように、市場をきちんと形成していくことが大事になるはずだ。

近い将来、日本サッカー界に限らず、後発ながら成長を続けているバスケットボール、バレーボール、卓球、ハンドボール、ラグビーなどのプロスポーツクラブも欧米のように日常的に経営権交代が行われる時代に突入する可能性は大いにある。

今回の研究によって、1つの基準が生まれたのは朗報だ。このデータを役立てるためにも、第2段階の需給調査の結果が待たれるところ。木村氏らのチャレンジは続いていく。