KDDIが"ローソン経営"で狙う「シナジー」の中身

ローソンのモデル店舗のイメージ
会見でお披露目された、KDDIの技術などをフル活用したローソンのイメージ店舗(撮影:尾形文繁)

「どうやってわれわれがサポートしていくか、話したい」

9月18日に都内のホテルで開かれた、ローソンの今後の運営方針などに関する記者会見。その壇上で、KDDIの?橋誠社長の口から最初に語られたのは、「サポート」という言葉だった。

KDDIと三菱商事による、ローソンの共同経営がいよいよ本格化する。8月に両社の折半出資体制へと移行し、9月2日付でKDDI出身の雨宮俊武氏がローソンの副社長に就任した。

KDDIがローソンに対する約5000億円のTOB(株式公開買い付け)を発表したのは今年2月のこと。大手通信キャリアと大手コンビニという異業種タッグは大々的に報じられたものの、連携の具体的な中身は見えてこなかった。

あれから7カ月、満を持してこの日行われた会見は、KDDIの情報通信テクノロジーをリアル店舗運営に活用した「未来のコンビニ」像を示すことに焦点を当てた内容だった。

新型モデル店舗をKDDIの新本社に

「未来のコンビニ」の取り組みとして挙げられたのが、AIを活用したスマホレジやデジタルサイネージ(電子掲示板)などの導入だ。会見場にはサービスを体験できるコーナーも設けられた。

レジに並ばずスマホアプリのみで商品を決済できるサービスを充実させたり、顧客の性別などに応じたおすすめ商品が表示されるデジタルサイネージを店舗棚に設置したりする。店舗でKDDIなどのサービスを提供するリモート接客システムや、飲料品を戸棚に自動陳列するロボットなども紹介された。

ローソンのイメージ店舗に設置されたデジタルサイネージ
デジタルサイネージでは顧客の属性に応じたおすすめ商品などが表示される(記者撮影)

ローソンはこうしたDXや省人化対策を通じて、2030年度までに店舗オペレーションを30%削減する目標を掲げた。来春には、KDDIが移転する高輪の新本社に、会見で示されたサービスを取り入れた第1号店舗を設置する。

新店舗はあくまで実験的なモデルケースといい、ここで磨いた技術を部分的に横展開していくこととなりそうだ。ローソンの竹増貞信社長は「国内コンビニは2030年に2桁%以上売り上げを伸ばせるところに目線を置きたい」と語った一方で、「コミットしたわけではない」とも述べ、KDDIの支援を通じた明確な業績目標は示されなかった。

ローソンの店舗運営を強力に支援する姿勢をみせたKDDIだが、TOBに約5000億円もの巨費を投じた以上、気になるのは自社事業とのシナジーだ。

近年、通信キャリアの本業である個人向け通信の伸びは頭打ちとなりつつあり、各社にとって金融など非通信事業強化が経営課題だ。国内だけで1万4000超に及ぶローソンの店舗網を活用することで、KDDIにどのようなメリットがもたらされるのか。

KDDIの高橋誠社長とローソンのモデル店舗に導入するロボット
技術面などからローソンの店舗運営をサポートする姿勢を強調したKDDIの?橋誠社長。自動陳列ロボットなどの導入も(撮影:尾形文繁)

この日、KDDIが自社事業に関連して具体的に示した唯一の指標は、「auスマートパスプレミアム」の会員数を1500万から2000万に拡大させる、というものだった。

同サービスは月額548円を支払うと、映像や音楽、書籍といったエンタメコンテンツを利用できるほか、ローソンや映画館で使えるクーポンなどを取得できる。KDDIはこのサービスを今年10月2日から、「Pontaパス」という名称に刷新すると発表した。会員数の拡大に向けて、ローソンやauサービスで利用できる共通ポイント「Pontaポイント」の還元を強化したり、店舗の商品で使えるクーポンを充実させたりする施策も展開する。