マクドナルド「髪色自由化」が導く"本当の狙い"

「大げさではないか」と思われるかもしれないが、決してそうではない。

Z世代にとっての「自分らしさ」

マクドナルドは、今回の規約改訂に関して、下記のような表明をしている。

約20万人のクルーが髪色を自己表現の1つとして自分らしい働き方をしてほしい、また自分らしく働くことによってさらにポジティブに仕事に取り組んで欲しいと、一人ひとりにあった価値観を尊重しながら、お客様に快適な環境でお食事をしていただける店舗運営に努めていこうという、想いを込めて実現したものです。

マクドナルド
試験的にテスト導入をしていた、大阪府のマクドナルド天王寺北口店のクルーの声(画像:日本マクドナルド公式サイトより)

先行する似た取り組みとして、P&Gのヘアケアブランドのパンテーンが、2018年9月から行っている「#HairWeGo さあ、この髪でいこう。」がある。

この一連の取り組みの中で、パンテーンは「#令和の就活ヘアをもっと自由に」プロジェクトを始動させ、自分らしい自由な髪で就職活動を行うことを呼びかけた。2019年には、令和元年の内定式に向けて、139社の企業から賛同を集め、「内的式に、自分らしい髪で来てください」と呼びかけている。

筆者は大学教員になって、3年半になるが、いまの大学生は非常にさまざまな髪型、髪色をしている。

自分自身は国立の理系学部だったこともあるかもしれないが、学生だった頃は、同級生の髪色はほとんど黒だった。茶髪の人が一人いたが、「あいつは茶髪やけど、真面目で成績もいいんや」みたいな言われ方をしていた。

いまの学生は、男女問わず、金髪だけでなく、青や緑の髪色をしていたりする人もいるのだが、そういう学生が勉強を怠けていたり、成績が悪かったりするかというと、まったくそんなことはない。

五輪においても、金髪の若手アスリートを目にすることも多くなった。日本選手団の旗手を務めた女子フェンシング・江村美咲さんもそうだった。

江村さんは外見に関して批判されたが、それに対して「自分の好きな自分だったらいいかなと。いろんな意見あると思うけど、自分が一番心地よいことが大事」と答えている。

江村美咲
金髪姿がトレードマークだったフェンシングの江村美咲さん(画像:本人の公式Instagramより)

江村さんの発言からも、若い人にとって、髪の色、あるいは髪型やファッションは「自分らしさの表現」でもあることがうかがえる。

資生堂のメイクアップブランド「マジョリカ マジョルカ」は、「流行より自分らしさを大切にする」若年層向けブランドとして、2003年に誕生している。この辺の時代から、若者が「自分らしさ」を重視するようになり、メイクアップやファッションで「自分らしさ」を表現する時代になっている。

海外では「アクセサリーだらけ」「椅子に座って」接客

マクドナルドの発表を見ても、そうしたZ世代の特徴を踏まえているように見える。

筆者はコロナ前、1カ月単位で海外旅行に行っていたが、接客サービスに対する意識が、日本とかなり異なっていることに気付かされた。

ヨーロッパに行ったとき、スーパーのレジや、ホステルのスタッフが、いろいろな髪型、髪色をしていた。中には、いくつもアクセサリーやピアスを身に着けている人もいた。また、彼らは椅子に座って接客をしていた。服装も人それぞれで、制約は少なそうだった。

フランス領ポリネシアを旅した際は、豪華客船に乗ったのだが(一番安い相部屋だったが)、スタッフの服装はラフで、フレンドリーだった。

最初は戸惑ったが、すぐに慣れて、外見や接客のやり方は気にならなくなった。むしろ、日本の接客サービスのほうが、型にはまっていて、窮屈だと感じるようにさえなった。