いわいとしお『100かいだてのいえ』偕成社
『100かいだてのいえ』という絵本を手にとってまず驚くのは、それが縦型であることです。縦型──それはスマートフォンが普及した現在では当たり前となりましたが、かつては珍しいものでした。なぜならテレビも、写真も、そして絵本もほとんどが横型であるからです。しかし、『100かいだてのいえ』は縦型だったのです。
縦に開く『100かいだてのいえ』は、その特徴を活かした内容になっています。縦長の場所が舞台なのです。
主人公のトチくんのもとにある手紙が届きます。それは100階建ての最上階に住む誰かから、「遊びにきてね」と招待される手紙でした。トチくんは天まで届きそうな100階建ての家をのぼっていきます。
その家は10階ごとに違う生物が暮らしていました。トチくんは家をのぼっていくことで、いろんな生物と出会います。いったい最上階にはなにが住んでいるのでしょうか──?
このユニークな絵本はたちまち人気になり、100万部を超えるロングセラーになっています。『ちか100かいだてのいえ』『うみの100かいだてのいえ』とつづいてシリーズ化し、現在までに6タイトル出ています。シリーズに共通しているのは「100階建て」という部分です。
この絵本はまず20階建てで考えたそうです。そして、制作を進めるうちに100階になりました。この絵本にインパクトがあるのは、ひとつの「家」が「100階建て」だというところです。
通常は平屋や2階建て、3階建てであるはずの家が100階まである。そこにたくさんの動物たちが住んでいる。1階ごとに特徴があり、それが100も集積されているところに読者の心を捉える魅力があります。絵本のなかでさまざまな住民と出会い、生活を垣間見られるところが『100かいだてのいえ』の面白さです。
通常はバラバラなはずの「家」が「100階建て」として1カ所に集まることによって、読者にインパクトを与えています。
いわいとしおは1962年生まれの絵本作家、メディア・アーティストです。幼いころからパラパラ漫画を描いて遊んでいました。また、親から工作の本と工具を与えられたことをきっかけに、おもちゃを自分で作るようになりました。
筑波大学の芸術専門学群に進学してからは、アニメーションの制作をはじめます。テレビ番組のCGタイトルを手掛けました。また、1987年には『オトッキー』というゲームを制作しています。