「私なんて」と自己評価が低すぎる人に言いたい事

たとえば、上司に理不尽な叱られ方をしたときに「相手は上司なのだから、納得できなくても、部下として受け入れるのが正しい」と判断する。こんなふうに考えるのが、このものさしの特徴です。

社会生活を送っているのだから、「正・誤」や「善・悪」でジャッジするのはある程度仕方ないと思うかもしれません。しかし、このものさしを使い続けていると、ある問題が起きます。

それは、自分の感情が置き去りになってしまうこと。本音を抑えたり、本心をみないようにしたりしているうちに、自分を大事にする気持ちや自尊心が次第に削がれていくのです。

クリニックを訪れる患者さんも、このものさしで物事を判断している場合が多く、好き嫌いをはじめとした自分の感情がわからなくなっているケースがあります。

ですから、上司との関係がこじれている方に「その上司が好きですか? 嫌いですか?」と質問しても、「さあ、よくわかりません」と困惑顔です。

しかし、「上司の言葉に対して、どう思いましたか? むかつきませんでした?」と尋ねるとハッとした表情になり、「あ、ムッとしました」という答えが返ってきます。

つまり、「感情」に一歩踏み込んだ質問をされてはじめて、自分の気持ちに気づけるのです。

「感情」と「事実」を切り分けて考える

謙遜さんも多かれ少なかれ、似たようなものさしで物事を判断している可能性があります。ですから、本心を抑えつけているものさしを手放し、常に、自分が今「どう感じているか」に意識を向けていただきたいのです。

念のためにいうと、自分の好き嫌いやそのときの感情だけに集中すればいいというわけではありません。

今まで感情を置き去りにしがちだった謙遜さんが、自分の気持ちに意識を向けるのは大切ですが、同じくらい客観性も重要なのです。

ですから、物事を客観的にみるために、「感情」と「事実」を切り分けて考えましょう。

先ほどの例でいえば、まずは「私は今、この上司にイラついてるんだな」と自分の感情を認め、受け入れる。そして、「上司に叱られた」という事実を把握して、同じ事態に陥らないための改善策を考える。

このように、自分の気持ちに寄り添いながら、客観的に事実をみていってください。

「なんだかむずかしそう」と思うときは、「私は今、どんなものさしを使っているかな」と考えるだけで構いません。そうすれば、「いい・悪い」のものさしを手放し、自分の気持ちにフォーカスできるようになるでしょう。

他人ではなく、自分の「好き」を基準に選ぶ

次のヒントをお話しする前に、ひとつ質問です。

新しい洋服を買うとき、あなたはどんな基準で選んでいますか? 「SNSや雑誌で話題になっている服」や「一般受けしそうな服」を選んではいませんか?

もしそうだとしたら、この機会にその基準からは卒業しましょう。謙遜さんから脱却したければ、服選びの基準はひとつ。「自分の好きな服」です。

「なぜ、服選びと自分をほめることと関係があるの?」と不思議かもしれませんが、両者には深い関係があります。

自分が着る服なのに、流行りの服や万人受けする服を選んでいるとしたら、その背後には「人と比べて流行の先端にいっていたい」「人から評価されたい」「みんなと同じでなければいけない」「目立つのが怖い」という思いがあるのです。

それは、自己評価の基準が「他者との比較」や「他者からの評価」になっている、つまり「他人軸」で自分をみている証拠です。

もちろん、服選びはひとつの例にすぎません。なにかを選択する際に、謙遜さんは、自分の好みや希望よりも「人からどうみられるか」「人と比べてどうか」を基準にしがちな傾向があります。

しかし、そんな行動基準は、遅かれ早かれ行き詰まります。