その意味では、テレビは脳の老化を速める「老化促進マシーン」であると言っても過言ではないのです。
そこで、もしもワイドショーを見るのなら、コメンテーターの一人になったつもりで、叩かれている側を擁護してみるとか、他のコメンテーターに反論してみるのが、メンタル的にも脳科学的にもお勧めの「テレビの見方」です。
反論するためには相手の言うことをそのまま鵜?みにせず、「この人たちはこう言っているけれども、それは本当だろうか?」と疑う力が必要になります。「どの部分がおかしいと思うのか」と考え、「実際はどうなのか」と調べてみる。こうした作業が前頭葉を活性化させるのです。
また、どんな罪を犯した人でも、そこに至った理由があるはずです。
もちろん犯罪そのものは許されるものではありませんが、その背景には成育環境の影響もあるかもしれませんし、複雑な事情があるのかもしれません。
しかし、「こいつだけは許せない」「こんな悪人は人間ではない」という硬直した見方を続けていると、それ以上は思考停止して何も考えられなくなってしまいます。
一見わかりやすいレッテルや決めつけ、また脳にとってラクな考え方に流されるのではなく、常に意識して疑い、考えを巡らせ、問いかけてみる。
それこそが自分自身の老化の進行を食い止め、うつ的な思考に陥るのを防いでくれるのです。
テレビの刷り込みを信じたい人に見てとれるのは、「皆と同じ意見だと安心する」「一人だけ違う意見を持つのは不安」という同調意識です。
それは「常識」と言われるものを重んじて、異端を許さないという同調圧力にもつながります。
しかし本来、人間というのは全員が同じ意見を持つことなどあり得ません。それなのに「皆と意見を揃えるべきだ」などと考えているとストレスは溜まっていくばかりです。あまりに強い同調圧力が常に存在している状態はストレスのもとになり、うつ病などの精神疾患にもつながりかねません。
ですから、うつにならないためには、その社会で「常識」とか「当たり前」とされるものを疑ってみることも大事です。
たとえば、いじめによる生徒の自殺が起きたとき、ワイドショーではその学校の体制や体質を糾弾しますが、そこを責めても「正義の味方」気分を味わえるだけで、何の解決にもつながりません。
それよりも、「そんな学校からは逃げたほうがいい」「どんどん人に泣きついていい」「我慢なんてしてはいけない」ということを伝えたほうがいいのです。
これは学校だけでなく、企業でも同じです。
職場が辛いなら、我慢をしないで逃げればいい。日本人には子どもの頃から「逃げるのは良くないこと」といった概念が刷り込まれているように思いますが、辛いときに逃げるのは、「常識」以前に、人間として基本的な防衛本能であり、大事な生存戦略です。
戦でも勝ち目がないなら退却すべきで、むやみに突っ込んでいくとか、ひたすら耐え忍ぶのは愚策としか言いようがありません。職場でもじっと我慢していたら、うつ病になって心身を疲弊させてしまいます。「逃げるのは人として卑怯だ」なんて言っていたら自らが壊滅するだけです。
いじめ加害者やパワハラ上司、問題を見過ごす会社の体質は、そんなに簡単には変えられません。環境が劣悪なときには、環境から逃げることです。逃げることは卑怯でも何でもなく、自分自身の身を守ることにつながるのです。