感想を伝えるときも同じです。「楽しかった」と思ったなら、「どのように楽しかったのだろう?」と一歩掘り下げてみましょう。「推しをプレゼンするワークが楽しかった」という答えが出てきたら、さらに「そのワークが楽しいと感じたのは、なぜだろう?」と掘り下げていきます。
こうして掘り下げていくことで、感想を言語化して伝えることができるようになっていきます。
感想が伝えられるようになったら、次のステップが「確認」です。
感想がうまく伝えられる人は少ないと書きましたが、確認はさらに少なくなっていきます。
確認とは、話を聞いていたときに「?」と疑問に思ったことを尋ねることです。
「それってこういうことですか?」「この部分がよくわからなかったので、もう一度説明していただけますか?」と相手に尋ね、得た情報を補強していきます。
確認作業を怠ってしまったことによって、誤解が解消されないまま進んでしまい、トラブルが起きてしまう。これは誰しも一度は経験したことがあるはずです。
しかし、確認は非常に難しいものです。
「無知だと思われたらどうしよう」
「嫌そうな顔をされたらどうしよう」
「仕事に影響したら嫌だな……」
「責められてると思われたら困るな」
こういった気持ちが生まれてしまうため、人は会話において確認を挟むことはほとんどありません。確認作業は心理的にもハードルが高いので、つい「あとで聞こう」と後回しにしがちです。
しかし、後回しにすると話がずれたまま進んでいって、軌道修正ができないまま会話が終わってしまうことも多々あります。当然仕事の効率も落ちますし、確認しないことがモチベーションの低下にもつながります。
以前、ある問題を解決するためのミーティングに参加したときのことです。
いろいろな意見が飛び出していましたが、私にはどれも表面的な解決策のように思えたため、率直に「表面的な話に終始していて、全く熱意を感じません」と伝えました。すると、ある参加者から「熱意がないとは、どういうことだ」と強く反論されたのです。
あとからわかったのですが、実は、私もその方も「この場が表面的な議論になっている」という意見は共通していました。ただ、私が発言した「熱意がない」という言葉が引っかかったのだそうです。
私はかなりハキハキと思ったことを話すタイプです。その私が「熱意がない」と発言したものですから、「声高に主張する人だけが熱意を持っているのではない。内なる熱意を抱えている人もいる。それなのに、『熱意がない』と勝手な判断を下すのはどうなのか」と反発を感じたのだそうです。
ミーティングが終わってから私たちは、そのことについて膝をつき合わせて議論を行いました。このときに行ったのが、「確認」という作業です。
確認というプロセスを経たおかげで、私の「熱意がない」という発言の意図を理解してもらうことができました。そして、その方の思いや熱意に対する定義を私も知ることができました。議論を交わしたあと、とても結束が強まったのです。
しかし、このとき、もしもお互いが「あの人とは相容れない」「もうつき合いきれない」とシャットダウンしていたら、おそらくチームは空中分解していたはずです。
「表面的な議論に終始している」という問題意識が共通しているのに、誤解を解消できなかっただけでチームが崩れてしまう。これは、損失以外の何物でもありません。
確認のハードルを越えられたら、次のステップが「質問」です。
質問もとても難易度が高いものです。研修の場で質問を受けつけても、なかなか手が挙がりません。「どんな聞き方をしたらいいかわからない」「何を聞いたらいいかわからない」と感じている方がとても多いようです。質問が出たとしても、「熱意って何ですか?」というような、抽象的な質問になりがちです。