『Coffee Inc 2』というiOS向けアプリゲームをご存じだろうか。2024年2月ごろに話題になって人気は急上昇し、一時は『スイカゲーム』を抑えて有料ゲームランキング1位を記録した。
本作はコーヒーチェーン会社を運営するゲームなのだが、単におもしろいゲームとしてゲーマーに注目されたわけではない。リアルに近い会社経営を学べる「ビジネス・シミュレーションゲーム」として、ベンチャー経営者などからも人気を集めているのだ。
通常のコーヒーショップ経営シミュレーションとなると、プレイヤーは店長といった立場になるものがイメージしやすい。ゲーム内容も、店内のインテリアや提供するコーヒーにこだわるなど、コーヒーを提供する・されるミクロの立場から物を見るものが親しまれやすい。
そうなるのも当然である。多くの人はコーヒーを淹れたり飲んだりする1人の人間であり、そういう視点のほうがわかりやすく楽しみやすいからだ。だが、『Coffee Inc 2』はあくまで経営者視点で物事を進めていく。
本作の基本的な流れは次のようになる。まずは銀行から融資を受け、そのお金で出店を行う。利益が出て資金が増えたら、借金を返してまた融資を受けて新たな店を出す。
店を出す場所もニューヨーク、シアトル、日本、ベルリンなど世界中の都市を選ぶことができる。また、店の管理は店長に任せることもできるため、いちいち面倒を見なくてもよいのだ。店内のインテリアにこだわることも可能ではあるが、それは本筋ではない。
事業が軌道に乗ってきたら、今度はオフィスを構え、店の管理や経理を人に任せられるようになる。賃借対照表では売上高や各種費用も細かく記載され、賃貸料、人件費、減価償却費、一般管理費なども細かく数値が出るのだ。COOに店舗管理を任せ、CFOに不動産管理などの業務を依頼するなど、重役たちがそれまでの業務を引き継いでくれるようになる。
株式上場すれば、ライバルチェーン店との本格的な戦いのはじまりだ。政策、物価、金利などマクロ経済の動きを見つつ、新商品の開発や投資でより会社を大きくし、時には選挙運動への寄付を通じて世の中を動かし、一大コーヒーチェーンを目指していく。
このように、『Coffee Inc 2』はまさしく経営者になるゲームなのだ。ゆえに、ベンチャー経営者に注目されるのは当然であろう。
しかも本作がおもしろいのは、
つまり、コーヒーチェーンの展開はあくまでお金を稼ぐひとつの手段でしかない。コーヒーが好きな人にとっては残念な知らせかもしれないが、本作はあくまでビジネス・シミュレーションなのでそれでよいのである、という姿勢なのだ。