さっそくですが、あなたの周囲に「自分は仕事ができる」と勘違いしているビジネスパーソンはいないでしょうか。どの世界でも言えることですが、過信することは破滅への第一歩です。
そんな「勘違い」の例として、今からふたりの人物を比較してみます。
結果から判断すれば、Aさんは残念ながら少しばかり勘違いをしていたのかもしれません。一方でBさんはよく自分のことがわかっていると評価すべきでしょう。
誤解していただきたくないのですが、私は起業することとしないことの比較をしたいわけではありません。このふたりの思考の違いを比較していただきたいのです。
Aさんにはなくて、Bさんにはあるものはいったい何でしょうか。「謙虚さ」といった答えが必ずしも間違いだとは思いません。
しかし私はもっと本質的かつ決定的な差があると思っています。それは因数分解する能力の有無です。
「因数分解する能力」とは、いったいなんなのでしょうか。先に挙げた例をもとに、考えてみましょう。
Aさんは自分の成果はすべて自分のスキルによるものだと思っています。これをあえて数学的に表現するとこうなります。
(成果を決めるもの)=(自分のスキル)
つまり成果を100だとしたら、自分のスキルも100ということになります。
一方、Bさんは会社のブランド力という存在を認識できており、自分自身のスキルとしては平均的であると思っています。こちらを同じように表現するとこうなります。
(成果を決めるもの)=(会社のブランド)×(自分のスキル)
成果を100だとして、その100という数字は会社のブランドが10、自分のスキルが10、そのタッグによって生み出された100だという認識です。
あらためてAさんとBさんを比較したとき、ふたりの違いは数学的には上記の数式の違いと説明できます。その違いは「謙虚さ」の有無ではありません。物事を因数分解する能力の有無です。
そして、このように比較をすることで、「勘違い」とは、自分のスキルが10しかない人が、自らのスキルは100に相当すると思ってしまうことだと説明ができます。いかに愚かなことであるかがわかりますし、独立しても失敗することは必然と言えるでしょう。