「自分は有能」と勘違いする残念な人に欠けた視点

勘違い
あなたの周囲に「自分は仕事ができる」と勘違いしているビジネスパーソンはいないでしょうか(写真:mits/PIXTA)
「数字に弱く、論理的に考えられない」
 
「何が言いたいのかわからないと言われてしまう」
 
「魅力的なプレゼンができない」
 
これらすべての悩みを解決し、2万人の「どんな時でも成果を出せるビジネスパーソン」を育てた実績を持つビジネス数学の第一人者、深沢真太郎氏が、生産性・評価・信頼のすべてを最短距離で爆増させる技術を徹底的に解説した、深沢氏の集大成とも言える書籍、『「数学的」な仕事術大全』を上梓した。
 
今回は「因数分解思考」について取り上げ、仕事ができる人がやっている因数分解思考を簡単に身につける方法を紹介する。
 

「仕事ができる」という“勘違い”の元凶

さっそくですが、あなたの周囲に「自分は仕事ができる」と勘違いしているビジネスパーソンはいないでしょうか。どの世界でも言えることですが、過信することは破滅への第一歩です。

そんな「勘違い」の例として、今からふたりの人物を比較してみます。

<Aさん>
・会社でトップクラスの成果をあげている
・「このスキルがあるなら、独立しても絶対に成功できる」と熱く語る
・満を持して起業をしたが、どうにもうまくいかずに苦しんでいる
<Bさん>
・会社でトップクラスの成果をあげている
・「私が成果をあげられるのは、会社の名刺やブランドがあるからに過ぎない。自分自身のスキルとしては平均的」と冷静に語る
・起業にはまったく興味がなく、これからも会社に属して活躍していくつもり
 
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結果から判断すれば、Aさんは残念ながら少しばかり勘違いをしていたのかもしれません。一方でBさんはよく自分のことがわかっていると評価すべきでしょう。

誤解していただきたくないのですが、私は起業することとしないことの比較をしたいわけではありません。このふたりの思考の違いを比較していただきたいのです。

Aさんにはなくて、Bさんにはあるものはいったい何でしょうか。「謙虚さ」といった答えが必ずしも間違いだとは思いません。

しかし私はもっと本質的かつ決定的な差があると思っています。それは因数分解する能力の有無です。

「因数分解する能力」とは、いったいなんなのでしょうか。先に挙げた例をもとに、考えてみましょう。

「勘違い」は「因数分解」で説明できる

Aさんは自分の成果はすべて自分のスキルによるものだと思っています。これをあえて数学的に表現するとこうなります。

(成果を決めるもの)=(自分のスキル) 

つまり成果を100だとしたら、自分のスキルも100ということになります。

一方、Bさんは会社のブランド力という存在を認識できており、自分自身のスキルとしては平均的であると思っています。こちらを同じように表現するとこうなります。

(成果を決めるもの)=(会社のブランド)×(自分のスキル)

成果を100だとして、その100という数字は会社のブランドが10、自分のスキルが10、そのタッグによって生み出された100だという認識です。

あらためてAさんとBさんを比較したとき、ふたりの違いは数学的には上記の数式の違いと説明できます。その違いは「謙虚さ」の有無ではありません。物事を因数分解する能力の有無です。

そして、このように比較をすることで、「勘違い」とは、自分のスキルが10しかない人が、自らのスキルは100に相当すると思ってしまうことだと説明ができます。いかに愚かなことであるかがわかりますし、独立しても失敗することは必然と言えるでしょう。