東京タワーが観光スポットとして人気再燃の理由

リトル東京タワーのイルミネーション(筆者撮影)

1階には2005年に公開された映画『ALWAYS 三丁目の夕日』の舞台となった「夕日町三丁目」(架空の町)の街並みを再現したジオラマが展示されていた。映画のワンシーンが彷彿とされ、昭和30年代にタイムスリップしたかのようだ。奥には「RED゜TOKYO TOWER」の一角があり、若者がボートレースの体験型アトラクションを楽しんでいた。

メインデッキに向かうエレベーターに乗り込んだ10人ほどの客は、筆者と1組の日本人カップル以外は台湾人のグループだった。メインデッキで東京の夜景を楽しむ。日本一の超高層ビル「麻布台タワー」(330メートル)や「虎ノ門ヒルズ」、そして東京スカイツリーなど夜の摩天楼ワールドを一望できる。

ふと、ある景色が消失していることに気が付いた。以前来た時には、レインボーブリッジの左手にお台場の観覧車が見えたのだが、その姿がない。昨年、一帯の再開発のため営業を終え、解体されたのだった。新たな超高層ビルの登場と退場していった観覧車。時代の流れを実感する。

さまざまな国からの外国人が訪れる

メインデッキから高さ250メートルのトップデッキへ向かうゲートの前には、トップデッキツアー参加客の長い列ができている。それにしても外国人が多い。英語、中国語、韓国語、フランス語、スぺイン語などさまざまな言葉が飛び交っている。カップル、グループ、団体客、家族連れなど多彩だ。コロナ前の外国人客は4割ほどとのことだったが、この日はそれ以上ではないかと思えるほどだった。

エレベーターで3階に下りると、「RED゜TOKYO」の3階エリアが無料になっていたので覗いてみた。異次元空間に向かうかのようなエントランスを抜けていく。やがて現れたのは最先端のデジタルテクノロジーの世界。映像演出とゲームが融合したラウンジの一角では、ゴーグルを着けた若い女性がVR空間に身を置いて歓声を上げながら独自の世界に浸りきっていた。

オフィシャルストアでは、現在コラボ中のテレビアニメ『推しの子』の関連グッズが販売されていた。ストアの奥には加熱式たばこ専用、紙巻きたばこ専用の喫煙所がある。喫煙者への配慮にホスピタリティを感じる。

3階のタワーギャラリーでは創業者の「前田久吉展」が開催中(1月8日まで)。大阪で丁稚奉公からスタートした前田翁のメディア経営者・実業家・政治家としての一生をひもとく中で、戦争で失われた日本人の誇りと自信を取り戻すべく昭和30年代に進められた東京タワー建設への情熱をひしひしと感じ取ることができる。

展示コーナーのパネルにはこんな言葉が紹介されていた。

東京タワー構想
「どうせ作るなら世界一を。エッフェル塔を凌ぐものでなければ意味がない」

場内で放映されていたVTRでは、1958年3月に建設中のタワーを時の郵政大臣・田中角栄が視察に訪れたシーンも流れていた。戦後復興・高度成長期を象徴する光景だ。

東京タワーのチラシ(筆者撮影)

日本人にとっての心の原風景

時代とともに人々を魅了し続けてきた東京タワー。訪問者たちはその魅力をどう感じているのか、ネット上の声をいくつか拾ってみた。

「小学生の時以来2回目。後世に残したい建物」

「スカイツリーができても色あせない魅力ある建築物。日本の戦後からの復興や高度成長の象徴のような存在」

「本日限定のWBCイルミネーション(※2023年3月)に感動」

「田舎者の私にとって、求めていた東京がここにあります」
 
 高度成長の時代からそびえ続ける東京タワーは、日本の復興と成長・成功の象徴的建築物であり、日本人にとっては「心の原風景」となっているのではないだろうか。

さらに最新のエンタメやメガタウンの夜景を堪能できる空間であると同時に、昭和から令和への歴史を実感できる場所でもある。単なる観光名所を超えた奥深い魅力が、外国人も含めて年間200万人もの来塔者を引き寄せているのだろう。

2024年から東京タワー周辺の再開発が始まり、2030年前後に周辺一帯2万5000平方メートルが生まれ変わる。一体、どんな変貌を遂げるのか。周辺再開発と融合した新・東京タワーのさらなる進化を期待したい。