東京タワーが2023年12月23日に開業65周年を迎えた。日本の浮き沈みとともに歩んできた東京の象徴的存在も、東京スカイツリーの登場で電波塔としての役割は補助的なものとなり、コロナ禍では来塔者が一時激減。しかし、ここにきて東京タワーは再び輝きを取り戻している。
東京タワーの開業は1958年(昭和33年)。高さ333メートルは、創業者・前田久吉の「どうせ作るならエッフェル塔の高さをしのぐものを」との思いを反映した結果だ。自立式鉄塔としては当時世界一の高さだった。
2012年に開業した東京スカイツリーに電波塔としての主役の座は譲ったが、昭和、平成、令和という3つの時代にわたり燦然と存在感を放ち続けている。
2019年にリニューアルを終えたものの、翌年にはコロナ禍のため50日間の閉館を強いられ、インバウンド消失も加わり来塔者が激減した。開業以来の大ピンチだったが、この間は電波塔収入、観光収入に続く第3の収益源を確保すべく企業の商品発表会やウェブ発信イベントなどで観光収入の激減を補った。
同時に『上を向いて歩こう!東京タワーのライトアップが、皆さんに元気を与えられますように。』というクラウドファンディングのプロジェクトも実施し、4320万円の資金を集めた。
開業以来65年の歴史の中で、最多来塔者数は開業翌年(1959年)の年間約520万人。日本中から見物客が殺到し、その頃の最寄り駅だった浜松町駅から約2キロの行列ができたという。2018年には開業以来の来塔者数が1億8000万人を突破した。コロナ前の年間来塔者数は200万から300万人で推移し、外国人客が4割ほどだったという。
ここ数年、東京タワーは積極的な仕掛けを続けざまに行ってきた。主な取り組みは次の通りだ。
2020年11月~:天空を楽しむ茶道体験「朝茶の湯」をスタート
2022年4月:日本最大規模のesportsパーク開業 新たなエンタメ体験
2023年11月:1階に「K-POP Plaza Tokyo」をオープン(イベントは12月10日終了)
そして2024年以降は、三井不動産と芝公園を含めた周辺開発に着手予定だ。
インバウンド人気も高い。今年5月にインバウンドビジネスメディアが行った外国人に人気の東京のスポット調査によると、東京タワーは?チームラボプラネッツ?東京スカイツリー?浅草寺に続く4位となっていた。
2023年度の状況を運営会社の(株)TOKYO TOWERに確認すると、
「今年度の来塔者数は、昨年度に比べて約1.5倍の約200万人以上を見込んでおり、コロナ前とほぼ同水準か、それ以上になる予想です」(広報担当者)とのことだった。
実際の盛り上がり状況はどうなのか。クリスマスシーズン真っ只中の東京タワーを久しぶりに訪れてみた。浜松町から増上寺に向かって歩き出すとビルの間にオレンジ色に輝くタワーが浮かび上がって見える。増上寺の境内では大殿と東京タワー、そして超高層ビルをセットにしてスマホで記念撮影するアジア系の観光客の姿があった。江戸、昭和、令和の3時代が1枚の写真に納まる構図である。
浜松町から15分ほど歩いて東京タワーに到着。正面玄関の前には65周年を記念し、クリスマスツリーに見立てた高さ10メートルの「リトル東京タワー」オブジェが展示され、LEDライトを駆使した光のファンタジーが繰り広げられている。BGMが流れる中、リトル東京タワーの色がオレンジからブルー、グリーンなどに変化するイルミネーションショー。見物客はその美しさに魅了されている。