学習指導要領が改定され、令和4年度から新課程での学びが行われるようになりました。おそらくなじみ深い人もいるであろう「数学C」が復活したり、受験数学において重要単元の1つを担っていた「整数の性質」が吸収されたりと、学習内容がいくらか変化しました。
その中で、元々は任意履修の単元であった「期待値」が、「数学A」の「場合の数と確率」の単元に登場するようになったのです。「期待値」の定義は、「確率変数と確率のかけ算の総和」であるため、上で行った計算と同じです。
この期待値の考え方は、ビジネスでもとても役に立ちます。あなたがとある会社のメンバーで、来季の売り上げ目標を達成するための戦略を考えているとしましょう。
市場が好況であれば700万円の利益が見込まれるが、不況であれば200万円の赤字になると推測されるプランAと、市場が好況であれば250万円の利益が、不況であれば150万円の利益が見込まれるプランBがあった場合、あなたはどっちの方が「いいプランである」と感じるでしょうか。
ここで、プランBを選択する人は少なくないでしょう。理由としては、「好況でも不況でも、一定程度の利益が見込まれる」ことが挙げられます。この考え方は、決して間違っているわけではありません。
しかし、ここで「期待値」の考えを用いれば、もっと戦略を適切に評価できます。仮に市場が好況である確率と、不況である確率を50%ずつで考えてみましょう。
すると、プランAの期待値は、
プランBの期待値は、
となり、プランAの期待値の方が大きいことがわかります。つまり、この仮定においてはプランAの方が合理的な選択なのです。
もちろん、好況、不況の確率によって期待値も変わっていきます。例えば、好況である確率を30%、不況である確率を70%とすると、プランAの期待値は、
プランBの期待値は、
となり、プランBの期待値のほうが大幅に大きくなります。つまり、見た目の数字と直感だけで判断するのではなく、それぞれの確率から得られる期待値を考慮に入れて分析することが、適切な戦略立案には求められます。
高校数学において必修となった「期待値」の考え方は、さらにスタンダードなものになっていくでしょう。ビジネスの場においても、これを基に判断することは非常に重要です。