留学に匹敵!大人版「はじめてのおつかい」の効果

年齢が上がると挑戦が怖くなるからこそ、コンフォートゾーンから出ることが重要(撮影:今井康一)

業種や職種、あるいは年代やポジションに関わらず「今、求められている力は何か?」と問われたら、私はこう答えます。

「何とかするしかない状況で、何とかする力」

特に年齢が上がるほど「新しいチャレンジを怖がる人」は多いようです。もちろん若い年代でも怖がる人はいるし、年齢を重ねても新しいチャレンジを続ける先輩もいます。

「アウェイな環境でチャレンジしなければならない研修」を長く提供してきた立場からすると、やはり全体的には年齢が上がるほど「不安しかない」という言葉が出てくるようです。

留学する真の価値とは

この「何とかするしかない状況で、何とかする力」は、私が25歳の時に立ち上げた留学コンサルティング会社を経営する中で「留学で鍛えられる力はこれだ!」と思ったところに始まります。

留学の目的は「語学力を身に付けたい」「本場でしか学べない専門的な勉強をしたい」だったり、「異文化理解力」「異文化適応力」「異文化コミュニケーション力」などを挙げる人もいるでしょう。一方で留学から戻って年月が経つと「昔の話で、もう語学は全然ダメ」という人が出てくるし、専門知識は何十年も経てば陳腐化してきます。

だからこそ留学経験者で活躍されている人に「留学で身に付いた力で、今の仕事に活きている力は何ですか?」と聞くと、語学力や専門スキル・知識よりも「何とかするしかない状況で、何とかする力」と答える人が多いのではないかと思います。

留学では親元を離れ、1人でアウェイな環境に身を置くことになります。学校の先生やホストファミリーなどサポートしてくれる人が周りにいたとしても、自分で「何とかしなければならない状況」が出てきます。これこそが留学の価値だと言えます。年月が経っても、経験は消えるものではないからです。

VUCAな世界(VUCA World)と言われる今、まさに求められる力とも重なってきます。VUCA Worldとは「変化が激しく、何が起こるか予測しづらく、さまざまな事象が複雑に絡まって、何が正解なのかわかりにくい世界」のこと。「これをすればいい」という正解がないから、何とか自分で試行錯誤をするしかないのです。

どうやって経験するか

留学で鍛えられる力と言われても、大人が長期留学をするのは簡単なことではありません。マインドセット教育に長く携わっている経験から言えば、留学をしなくても同様の環境に身を置けばいいとなります。

普段の仕事でも何とかしなければならない状況は多くあるでしょうが、それは16歳の子が親元を離れて、海外というアウェイな環境に放り出されるようなヒリヒリする体験とは違います。やはりアウェイな環境の中で何とかする経験が必要なのです。

人材育成では「コンフォートゾーンを抜け出す」や「コンフォートゾーンを飛び出したところにラーニングゾーン(もしくはストレッチゾーン)がある」と言いますが、自分にとって快適な状況から少しだけ抜け出すことが重要です。初めてのことや、失敗する可能性のあることに挑戦してみるのです。

例えば私が起業したばかりの頃、自分が動かなければ何も仕事がありませんでした。当たり前のことですが、恥も外聞も捨てて、がむしゃらに走り回りました。「チャレンジは失敗が前提」と思うようになり、今でも躊躇なく動けます。

いくらコンフォートゾーンを飛び出せと言っても、大きなジャンプは必要ありません。大切なのは「少しのストレッチ」です。

コンフォートゾーンを抜け出しすぎると、ラーニングゾーンではなくパニックゾーンまで行ってしまい「もう二度とチャレンジしたくない」と閉じ籠もってしまうおそれがあります。