「持ち家か?賃貸か?」の論争と同じように、定期的にSNS上でにぎわう「おごりおごられ論争」というものがあります。
デートの費用を「男がおごるべきか否か?」という話なんですが、そもそもこの話は論争によって白黒つけるようなものではないし、当事者同士で解決すればいいだけの話です。
にもかかわらず、論争の焦点はいつも「おごれない男ってなんなの」という女と「男がおごるのが当たり前だと思っている女ってなんなの」という男の対立で盛り上がっています。
それに必ず割って入ってくるのが、聞いてもいないのに「俺は必ずおごるよ」とドヤ顔する男と「私は今までおごってもらったことしかないけど」という自慢女で、これがまた論争の火に油を注ぐ結果となります。
また、論争だけを聞くと「おごられたい女vs. おごりたくない男」の対立に見えてしまいますが、実際男女の意識はどうなのでしょう。
内閣府男女共同参画局が実施している「性別による無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)に関する調査研究」において見ることができます。20~60代の全国男女約1万人が対象者です。
「デートや食事のお金は男性が負担すべきか」という質問に対して、「そう思う」「どちらかといえばそう思う」というTOP2を「男がおごるべき派」としました。
2021年調査では、全年代平均で男37.3%、女22.1%という結果。2022年調査では、男34.0%、女21.5%となっており、むしろ男女差で見れば、女性より男性のほうが「男がおごるべき派」が多い結果となっています。
内閣府の調査はこの2年だけですが、私のラボでは、2015年から毎年この調査を実施しています。全8年間でみても、「男がおごるべき派」というのは全体的に男30%台、女は20%台で安定しています。参考までに2020年の結果は、男34.2%でほぼ内閣府の調査と大差ありません。
しかし、これはあくまで「おごるべきか」という意識を聞いたものです。実際のデートの現場ではどうなっているでしょう。
モデル百貨の「MoneyGeek」編集部による調査では、デートにおける飲食費を「全額男が負担」している割合は男41%、「パートナーが全額」と答えた割合は女24%となっていました。
女性は意識と実態がほぼイコールですが、男性の場合実際は「良いところを見せよう」というのでしょうか、意識よりプラス10%ポイントほど高くなっています。男女で差があるのは、一部の恋愛強者女性が複数の男性から「おごられている」ためでしょうか。
これらの結果をふまえると、意識にしても実態にしても男性のほうが「おごるべき派」が多いし、さりとていずれにしても「おごるべき派」は過半数にも達していないということがわかります。大半は「どっちでもいい」のでしょう。
結論からいえば、実際に円満なデートをしている男女にとってこの「おごりおごられ」は問題にすらなっておらず、時には男がおごり、時には女がおごったり、どちらかが多めに払うなど調整したり、割り勘にしたりと柔軟に対応していることでしょう。
つまり、うまくいっているカップルというのは、二人の時間をいかに楽しく共有できるかという点が大事なのであって、デート代をどちらがおごるかなんてこと自体に不快を覚えることもなく、論争の種にもならないことなのです。
実際に、SNS上で論争しているさまをみていると、「男がおごるのが当たり前という女」と「男がおごるのは当たり前ではないという男」との間で激化しており、最後は互いに相手をなじりあうだけのものとなっているのですが、この両者は価値観が相容れない者同士です。