「単なる中小企業」と「スタートアップ」の根本差

スタートアップ企業群では、しばしばベンチャーキャピタルなどからの大型の資金調達がニュースになる。これは自社の稼ぎだけでなく、資金を外部から調達したほうがレバレッジをかけてより早く、より大きく組織を成長させられる可能性が高いという戦略にもとづくものだ。

ちなみに、かつては「ベンチャー」という言葉もよく使われたが、現在は「スタートアップ」という呼称のほうが一般的になってきた。経済産業省が発表した資料では、スタートアップの定義として次の3点を挙げている。

1:新しい技術の活用、斬新なサービスなど新規性がある
2:加速度的に事業を拡大することを目指す
3:創業から間もない、比較的に創業年数の若い企業
 

この定義にのっとれば、ベンチャーとの差はそれほどないようにも思えるが、「加速度的に」とスピード感が強調されているのは、確かにスタートアップらしさともいえるかもしれない。

また、経済産業省の資料ではスタートアップを「社会課題を成長のエンジンに転換して、持続的な経済成長を実現する、まさに『新しい資本主義』の考え方を体現する新たなプレイヤーとして注目されています」とも説明している(出典:経済産業省ニュースリリース『政府・自治体職員必見!行政×スタートアップで社会課題解決へ「行政との連携実績のあるスタートアップ100選」を制作しました』)。

「新しい資本主義」は岸田文雄内閣総理大臣が掲げる経済政策であり、この説明だけでもスタートアップ支援が国策として位置づけられている意図が伝わってくる。

「やりがい」と「経済合理性」を両立

キャリアを設計するうえで大切なのは、「やりがい」と「経済合理性」の両立だ。社会に貢献できるやりがいのある仕事でありながら、金銭的報酬をしっかり得るということである。

資産をつくるための金銭的報酬は「給与報酬」と「株式報酬」に分かれる。

経済合理性でいえば、確かに大企業で役員に迎えられるようなキャリアであれば、かなりの資産を形成できるかもしれないが、多くの人に開かれたチャンスではない。

また、給与報酬だけを見れば、確かに外資系企業や日本の大企業のほうがスタートアップより高いケースはある。とはいえ、最近ではその差もかなり縮まっており、一概にも言えなくなってきた。

上場企業とスタートアップの平均年収のグラフ
(出所:『スタートアップで働く』)

日本経済新聞社がまとめた2022年の「NEXTユニコーン調査」では、回答企業の21年度の平均年収は650万円で、上場企業の平均を45万円(7%)も上回っていた。

「給料が安い」は思い込み

スタートアップで働く
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また、たとえば、大企業や官公庁といった「エンタープライズ」企業群をターゲットにした、ある未上場SaaS企業(Software as a Service、「サース」または「サーズ」と呼ぶ)では、セールスの平均年収が1500万円を超えているケースも出てきた。

すでに大企業群の給与と大差のないスタートアップもあり、あなたが「スタートアップは給料が安い」と思い込んでいるとすれば認識を改めたほうがいいだろう。