「起きたときが一番だるい」と感じたら危険信号

こうやって見ていくと、疲れた体が抱えやすい不調はとても広範囲ですし、さまざまな症状が重なって引き起こされることがわかります。

だからこそ、疲れを放置して長引かせてはいけないのです。

交感神経が優位になっているとき、コルチゾールというホルモンの分泌が乱れていることがよくあります。コルチゾールは、副腎の副腎皮質という器官から分泌されますが、その機能の根本にあるのは体の細胞内になる「ミトコンドリア」という器官です。

ミトコンドリアは、私たちの体内の赤血球を除くほぼすべての細胞の中に存在する細胞内小器官であり、人間とは別の遺伝子を持つ「元々は別の生命体」です。

細胞ひとつに対し、数百から数千個あるといわれていて、ここ10年ほどでいろいろな研究が進み、日本が世界をリードしている分野でもあります。

ミトコンドリアはさまざまな役割を持っていますが、なかでも一番重要なのは「ATP」という、いわば「エネルギーのもと」となるものを作り出す働きがあることです。ATPは「アデノシン三リン酸」という化合物で、私たちが体を動かし、生命活動を維持するために欠かせないエネルギー源です。

たとえていうなら、ミトコンドリアは、体内にある「エネルギー工場」のようなものなのです。

しかし、ミトコンドリアは年齢とともに量や質が低下していくといわれています。年齢を重ねてから、昔みたいに動けず、ちょっと外出しただけでも疲れてしまうのはミトコンドリアが減少している証拠かもしれません。

だからといって、年のせいだとあきらめてしまうのはもったいない話です! ミトコンドリアの数を増やし、元気にする方法があるからです。

筋肉量を増やせば、効率よくミトコンドリアを増やせる

ミトコンドリアは、赤血球を除くほぼすべての細胞に存在します。血管、脂肪、内臓などのあらゆる細胞にありますが、その数は一定ではなく、運動量の多い筋肉や神経細胞にとりわけ数が多いといわれています。

誰でも運動をしなければ、加齢とともに自然に筋肉量が減っていきます。それは同時に筋肉細胞内にあるミトコンドリアも減っていく、ということにほかなりません。これが加齢とともにミトコンドリア数が減る要因のひとつです。

逆にいうと、筋肉量を増やせば、効率よくミトコンドリアを増やすことができるのです。

私たちの体の筋肉には、瞬発力に使われる「白い筋肉」といわれる「速筋(そっきん)」と、持久力に関わり「赤い筋肉」といわれる「遅筋(ちきん)」があります。ミトコンドリアは、赤い筋肉である遅筋に豊富に含まれています。

遅筋はウォーキングやジョギングなどに使われ、背筋や太ももなどに多く存在します。生物でいいますと、ゆったりと回遊し続けるマグロや、長時間飛び続ける渡り鳥などが多く持っているといわれる筋肉です。

つまり、ミトコンドリアを増やすためには、持久力の筋肉を養う運動がおすすめなのです。

また、運動はミトコンドリアの数を増やすだけでなく、活性化することにもつながります。

適度な運動負荷を体にかけると、エネルギーのもとになるATPが消費されます。

すると失われたATPを補給するべく、エネルギーの生産工場であるミトコンドリアが活性化し、酸素をせっせととり入れて新たなATPをつくり出します。

つまり、有酸素運動を行うことで数と質、両方の効果が得られるということです。

これらを考えあわせると、ミトコンドリアを増やして活性化するには、遅筋を増やす筋力トレーニングと、ウォーキングや軽いジョギングなどの有酸素運動を行うのがよいでしょう。

気をつけたいのは、激しい運動をやりすぎてしまうこと。運動でエネルギーが急にたくさんつくられると、活性酸素を大量に発生させてしまうことにもなるからです。ミトコンドリアのエネルギー代謝活動によくありませんし、体にも活性酸素による不調が出てしまいます。