しかし、いつもその理想の姿でいられるとは限らないことを理解する必要があります。
納期があるのに納得できるクオリティに達するまで何度も仕事をやり直すわけにはいきませんし、絶対にミスをしない人もいません。体調が悪い日もあれば、忙しくて部屋の掃除が行き届かないときもあるでしょう。
完璧主義の人は、理想の自分を追い求め、しかし理想になりきれないときに自分に失望してしまいます。
「自分はいい母親ではない」
「仕事も中途半端だ」
思い悩み、イライラして周りの人に当たってしまうなど悪循環に陥ることもあります。
さらに完璧主義のまずい点は、理想の姿を他人にも求めることです。他人が自分の期待に応えられなかったとき、「どうしてこれくらいのことができないのか」と怒りを感じてしまいがち。相手を追い詰めるので、人間関係を悪化させてしまいます。
つまり、完璧主義は自分も周りも苦しめるという結果を招いてしまうわけです。
ミスのない仕事も、いい夫や妻、親であろうとする姿勢も大切であることは間違いありません。理想の姿を思い描き、努力を重ねることはポジティブに生きるための秘訣です。
ただし、理想の姿があまりにも現実とかけ離れると、怒りを感じやすくなってしまいます。完璧主義を捨てて、“現実に立脚した理想の姿”を目指しましょう。本当のポジティブシンキングは、現実に根ざしたものなのです。
■怒ってしまった自分を受け入れるのもアンガーマネジメントです
アンガーマネジメントは怒ること自体を否定していません。怒りは自然な感情であり、モチベーションにすることもできると考えています。
問題は、怒りの攻撃性です。攻撃は1、他人 2、物 3、自分 の3方向に向かいます。
1、他人を攻撃する
他人を攻撃すると人間関係を悪化させてしまいます。自分の立場や気持ちを伝えることは大切ですが、あまりに攻撃的になると、相手も自分も疲弊するばかりです。
2、物にあたる
「物にあたるのは誰も傷つかないから問題ない」と感じるかもしれませんが、そうではありません。物にあたると怒りは心に定着してしまうからです。癖になるだけではなく、どんどんエスカレートしがちなので、おすすめできません。
3、自分を攻撃する
失敗した自分を責めるのは攻撃を自分に向けているのと同じことです。罪悪感を募らせ、気持ちがふさぎ込んでしまいますから、これも避けるべきです。
とくにアンガーマネジメントを始めた当初は「他人を怒ってしまった」「やっぱり自分は怒りっぽい」と自分を責めてしまいがちです。しかし、怒りをコントロールしようとして、うまくいかずに怒っていては悪循環です。
怒ってしまった自分を否定するのではなく、怒りっぽい事実を認め、じっくりマネジメントしていきましょう。自分を受け入れるのもアンガーマネジメントです。
アンガーマネジメントでは怒ることを一概に悪いことと捉えません。むしろ、「怒るべきことは怒ったほうがよい」という立場を取っています。
では、「怒るべきこと」はどう判断すればよいでしょうか。判断基準は「後悔するかどうか」です。
怒ったほうがよいのは「怒らないと後悔すること」、怒るべきでないのは「怒ったら後悔すること」です。後で「やっぱり言えばよかった」と後悔するなら、怒ったほうがよいと言えます。